西側企業のロシア撤退、一時代に幕Photo:Konstantin Zavrazhin/gettyimages

 1990年、約3万人のロシア人が1月の厳しい寒さをものともせず、モスクワのプーシキン広場に列を作った。何時間も待った末に得たものは、マクドナルドのソビエト連邦1号店でハンバーガーとフライドポテトを初めて食べるという経験だった。

 その後、共産主義から資本主義へと急激に動き出したロシアで利益を得ようと、西側企業は一気に同国に押し寄せた。各社は、ソ連時代の品不足に慣れていた人々の生活に米国のファストフード、乗用車、ファッションを持ち込み、多くの場合かなりの規模の事業を構築した。スターバックスやiPhone(アイフォーン)、イケアは、モスクワやサンクトペテルブルクに住む中間層の日常生活の一部になった。

 こうした共生関係は、ロシアのウクライナ侵攻によって急停止した。

 米国とその同盟諸国による強力な対ロシア制裁と圧力によって、多くの西側企業がロシアで事業を展開することはほぼ不可能になった。マクドナルドや自動車メーカー、石油大手、銀行を含む何百もの企業が、ロシア事業の休止や撤退に動きつつある。欧米系のレストランや商店では明かりが消えた。

 ロシア当局は対抗措置として、西側企業が残した資産を国有化する考えを示している。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今週、ロシア検察当局が、西側企業の現地幹部が政府を批判すれば逮捕し、撤退する企業の資産を差し押さえると警告したと報じた。