管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」で結果を出すのが仕事。それはまるで「合気道」のようなものです。管理職自身は「力」を抜いて、メンバーに上手に「技」をかけて、彼らがうちに秘めている「力」を最大限に引き出す。そんな仕事ができる人だけが、リモート時代にも生き残る「課長2.0」へと進化できるのです。本連載では、ソフトバンクの元敏腕マネージャーとして知られる前田鎌利さんの最新刊『課長2.0』を抜粋しながら、これからの時代に管理職に求められる「思考法」「スタンス」「ノウハウ」をお伝えしていきます。

優れたリーダーが、あえて“ラク”をする深い理由とは?写真はイメージです。Photo: Adobe Stock

会議の「ファシリテーション」は、
メンバーの持ち回りにする

 私は、定例会議の議事進行でこだわっていることがありました。

 ソフトバンクの管理職だった頃、私は、下図のように、「30分会議」の前半15分を「インプット(情報共有など)」に、後半15分を「アウトプット(提案プレゼン、意思決定)」に使うようにしていました。そして、「インプット」のパートは管理職である私が司会進行をしますが、「アウトプット」のパートのファシリテーションはメンバーの持ち回りにしていたのです。

優れたリーダーが、あえて“ラク”をする深い理由とは?

 狙いは大きく3つあります。

 まず第一に、意思決定者である管理職がファシリテーターを務めると、どうしても発言者に遠慮や忖度が生じ、議論を歪めるおそれがあるためです。むしろ、管理職はメンバーのディスカッションを第三者的に聞くことで、意思決定に向けて思考を深めることに集中すべきなのです。

 また、管理職はメンバー全員が参加する定例会議の場で、メンバー一人ひとりの体調やメンタルの状況をチェックすることも意識したほうがいいので、その意味でも、管理職自らがファシリテーターとして議論に入り込むよりも、メンバーの様子を客観的に観察できるポジションを確保したほうがいいと考えています。

 オンライン会議では特にそうです。

 オンライン会議はリアル会議に比べて、「表情」や「場の空気」などの非言語的情報が圧倒的に少ないので、メンバーがどういう状態にあるかを把握するのが難しいからです。

 だから、メンバーにファシリテーターを任せるだけではなく、タイムキーパーや議事録担当者なども、別々のメンバーに任せて、一人ひとりにかかる負荷を少なくしたほうが、実りのある会議になるでしょう。誤解を恐れずにいえば、実りある会議を実現するためには、管理職は”ラク”をしなければならないのです。

優れたリーダーが、あえて“ラク”をする深い理由とは?前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年福井県生まれ。東京学芸大学で書道を専攻(現在は、書家として活動)。卒業後、携帯電話販売会社に就職。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。その間、営業現場、管理部門、省庁と折衝する渉外部門、経営企画部門など、さまざまなセクションでマネージャーとして経験を積む。2010年にソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして数多くの事業提案を承認され、ソフトバンク子会社の社外取締役をはじめ、社内外の複数の事業のマネジメントを託される。それぞれのオフィスは別の場所にあるため、必然的にリモート・マネジメントを行わざるを得ない状況に立たされる。それまでの管理職としての経験を総動員して、リモート・マネジメントの技術を磨き上げ、さまざまな実績を残した。2013年12月にソフトバンクを退社。独立後、プレゼンテーションクリエイターとして活躍するとともに、『社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『課長2.0』(ダイヤモンド社)などを刊行。年間200社を超える企業においてプレゼン・会議術・中間管理職向けの研修やコンサルティングを実施している。また、一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事、情報経営イノベーション専門職大学客員教授、サイバー大学客員講師なども務