メンバーの「当事者意識」を育てる
とっておきの方法

 第二に、会議の活性化です。

 会議とはメンバー全員の共同作業です。もちろん、管理職が果たすべき役割は非常に大きなものがありますが、個々のメンバーが会議に積極的に参加する「一座建立(いちざこんりゅう)」の気持ちがなければ、管理職ひとりの力では限界があるのは自明のことです。

 そこに、メンバーに持ち回りでファシリテーションを任せることに意味が生まれます。なぜなら、ファシリテーションのスキルは、非常に難易度が高いからです。メンバーの意見を引き出し、議論がズレたら軌道修正をし、的確な意思決定ができるようにさまざまな意見を整理するとともに、議論を焦点化していく……。慣れないうちは、思うようにはいきません。

 しかし、それがいいのです。

 ファシリテーションの難しさを実感したメンバーは、会議に非協力的であることが、どれだけファシリテーターに苦痛を与えているかを体感することができます。この経験が、彼らの会議に向き合う姿勢を自然と変えてくれるのです。

 もちろん、それは議論が収束しやすいように、自らの本音を隠して大勢の意見に迎合することではありません。それは、むしろファシリテーションの「失敗」です。

 そうではなく、よりよい意思決定に貢献するために、真剣に自分の意見をまとめて率直に発言したうえで、異なる意見もしっかりと受け止めて、論点を絞り込んでいく作業を共同で行えるようになる。要するに、メンバー一人ひとりが会議の当事者意識を身につけることで、必然的に会議は活性化されていくのです。

「会議のファシリテーション」から、
「育成のファシリテーション」へ

 第三に、メンバーの育成です。

 ファシリテーションのスキルを身につけるためには、関連書籍を読んだり、研修を受けるのも有効ですが、実体験をすることに勝る方法はありません。その実体験を、管理職の庇護のもと、最も安全にできるのが定例会議の場にほかなりません。そこで経験を積んでもらうことで、将来的に管理職として仕事をすることができる人材へと育成することができるのです。

 また、定例会議で身につけたスキルを活かして、社内外で行われる会議でもファシリテーションができるようになると、ビジネスマンとして非常に自信がつきます。この自信が、「自走力」を高めてくれるのです。だから、管理職は、「会議のファシリテーション」はメンバーに任せて、自分は「育成のファシリテーション」というポジションに立つことを意識すべきなのです。

 では、どのようにファシリテーションを指導するのか?