管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」で結果を出すのが仕事。それはまるで「合気道」のようなものです。管理職自身は「力」を抜いて、メンバーに上手に「技」をかけて、彼らがうちに秘めている「力」を最大限に引き出す。そんな仕事ができる人だけが、リモート時代にも生き残る「課長2.0」へと進化できるのです。本連載では、ソフトバンクの元敏腕マネージャーとして知られる前田鎌利さんの最新刊『課長2.0』を抜粋しながら、これからの時代に管理職に求められる「思考法」「スタンス」「ノウハウ」をお伝えしていきます。

「優れたプレゼン」に必ず備わっている“たった一つのストーリー”とは?写真はイメージです。Photo: Adobe Stock

課題の「現状分析」が甘ければ、
「解決策」は100%的外れ

 定例会議を効率化するためには、その場で議題となる提案のレベルを高める必要があります。

 そのために、私は、下図のような提案のサマリー・フォーマットをチーム内で共有していました。このようなシンプルなフォーマットを共有することで、メンバーに、意思決定に必要な要素を“抜け漏れ”なく準備してもらうことで、定例会議でスムーズな意思決定ができるようにするのが狙いです(詳しくはこちらの記事)。

「優れたプレゼン」に必ず備わっている“たった一つのストーリー”とは?

 ただし、このフォーマットのメリットはシンプルであることだけにあるわけではありません。シンプルでなければ短時間で意思決定することはできませんが、そのうえで、ロジカル(論理的)な提案でなければならないのは当然のことです。だから、このサマリー・フォーマットは、ロジカルな構成を意識してつくられています。

 具体的に見ていきましょう。

 上図のように、サマリーは大きく二つのパートから成り立っています。「現状分析」と「提案」の二つのパートです。

「現状分析」では、第一に「解決しなければならない課題は何か?」という課題設定を明確にしたうえで、第二に「その課題が生じる原因は何か?」を提示します。それを踏まえて、「提案」において、「その原因を解消する解決策」を提案するとともに、「その解決策を実施した結果、期待される効果」を示します。

 このように、「現状分析+提案」というロジックを備えていることが、意思決定を行うためには必須です。

 そもそも「現状分析」が甘ければ、それを踏まえて提案される「解決策」が適切である可能性はゼロですから、まず「現状分析」の妥当性をチェックする。そのうえで、「提案」の中身を吟味。この「提案」に実現可能性があり、成功確率が高いと判断できれば、GOサインを出すことができるわけです。

 なお、「提案」においては、「その解決策を実施するために必要なコスト」と「スケジュール」は必ず明記する必要があります。費用対効果が意思決定に不可欠なのは言うまでもありませんから、「コスト」を明記するのは当然ですし、どんな適切な「解決策」であっても、時機を逃せば効果は見込めませんから「スケジュール」も必須。この2点を明記しなければ、サマリーとしては不十分と言わざるを得ないのです。

「優れたプレゼン」に必ず備わっている“たった一つのストーリー”とは?前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年福井県生まれ。東京学芸大学で書道を専攻(現在は、書家として活動)。卒業後、携帯電話販売会社に就職。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。その間、営業現場、管理部門、省庁と折衝する渉外部門、経営企画部門など、さまざまなセクションでマネージャーとして経験を積む。2010年にソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして数多くの事業提案を承認され、ソフトバンク子会社の社外取締役をはじめ、社内外の複数の事業のマネジメントを託される。それぞれのオフィスは別の場所にあるため、必然的にリモート・マネジメントを行わざるを得ない状況に立たされる。それまでの管理職としての経験を総動員して、リモート・マネジメントの技術を磨き上げ、さまざまな実績を残した。2013年12月にソフトバンクを退社。独立後、プレゼンテーションクリエイターとして活躍するとともに、『社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『課長2.0』(ダイヤモンド社)などを刊行。年間200社を超える企業においてプレゼン・会議術・中間管理職向けの研修やコンサルティングを実施している。また、一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事、情報経営イノベーション専門職大学客員教授、サイバー大学客員講師なども務