承認欲求にさようならをする日

だから、ようやく。

ずいぶん時間はかかったけれど、承認欲求にさようならをする日が、来たのかもしれない。

感情のお葬式。

これまで、様々な感情を弔ってきた。お別れしてきた。

執着心。
焦り。
嫉妬。
劣等感。

これらは私の中で抹消されたわけではないけれど、ぴっと一本、線を引いたことで、ずっと遠くの物に感じられる。

けれどもずっと、離れられない感情があった。

承認欲求。認められたいと思う気持ち。

なぜなら、私は承認欲求に依存し、承認欲求というコンテンツによって、甘い汁を吸い続けてきたからだ。

いなくなってほしい相手であり、いなくなったら困る相手でもあった。

けれどもうそろそろ、お別れしてもいいのかもしれない。

認められたいと思わなくなるわけじゃない。
世間の目が気にならなくなるわけじゃない。

だけどでも、「さようなら」と一言、言ってもいいような気がする。

もう、あなたの役目は終わりと、お辞儀をして、お別れをしてもいいように思うのだ。

だって私は、幸せになるために生きてるんだから。

不幸の数を数えて、不幸自慢をして、辛いことや悲しいことをネタに共感してもらって、それで仲間を増やすために生きているわけじゃ、ない。

面白いことや楽しいことをやって、「居心地がいいな」と思う人と一緒にいて、そして、幸せになるためにここにいる。生きている。

欠損を分かち合うことで繋がり合えることもたしかにある。

けれども、最高に面白い瞬間を共にすることで繋がり合える絆の強さも、私は知ることができた。

子どもの頃からずっと、心のどこかで居場所を探していた。

家族といても、学校にいても、恋人といても、どこか、ぽっかり穴が空いたような気がすることがあった。

私には居場所がないような気がした。
求められていないような気がした。
社会に必要とされていない気がした。

でも私には今、居るべき場所がある。

必要としてくれる人がいて、大切にしてくれる人がいる。大切にしたい場所もある。大切にしたい人も、たくさんいる。

あるいは、そんな風に思う今の私は、必要とされないかもしれないけれど、それでも、いい。承認欲求はもはや、朽ちかけているコンテンツに過ぎないのだ。

ありがとう。

私は今まで、あなたのおかげで色々と楽しむことができた。味方が増えた。仲間ができた。居場所ができた。

おそらく承認欲求と気がすむまで向き合い続けた期間があったから、私は今前を向けているんだろうと思う。

そろそろ、さようならを言おう。

ずっとずっとお別れを言えなかったけど、あなたを弔うことにする。

次のステージに、私は進む。

不幸集めをして満足する人生は、もう終わりにしよう。

心が、震える。
静かに震える。

何かが変わりゆくときの、振動だ。

ほんの少しの寂しさと、不安と。
未来への期待で、震えているのだ。

さようなら。

承認欲求のお葬式川代紗生(かわしろ・さき)
1992年、東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。
2014年からWEB天狼院書店で書き始めたブログ「川代ノート」が人気を得る。
「福岡天狼院」店長時代にレシピを考案したカフェメニュー「元彼が好きだったバターチキンカレー」がヒットし、天狼院書店の看板メニューに。
メニュー告知用に書いた記事がバズを起こし、2021年2月、テレビ朝日系『激レアさんを連れてきた。』に取り上げられた。
現在はフリーランスライターとしても活動中。
私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)がデビュー作。