国際情勢を見るのに、地政学の視点は欠かせない。地理・世界史・民族。これら3枚のレンズを通すと、各国固有の事情が浮かび上がってくるのだ。本連載『ウクライナ危機の本質がわかる「地政学」超入門』では、最近再び脚光を浴びている地政学の基本や、地政学の観点から見えてくる各国ならではの事情をお届けする。今回は、地政学の「黒歴史」や代表的な理論を紹介しよう。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
地理的条件が
国家の趨勢を決める
ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、世界各地で予測不可能な事態が頻発している。これを受けて、最近あらためて脚光を浴びているのが地政学だ。
地政学とは、国土の地理的な位置や形が、民族や国家の政治、経済、軍事、社会的な動向に与える影響をマクロに分析する学問だ。基本的な考え方は、「隣接する国同士は互いに敵対する」「敵の敵は味方」といったものだ。
地政学を理解すれば、複雑怪奇に見えていた世界情勢の輪郭が、くっきりと浮かび上がるはずだ。
そもそも地政学とは、国土の地理的な位置や形が国家の政治、経済、軍事、社会的な動向に与える影響をマクロに分析する学問だ。
最初に押さえるべき用語はシーパワーとランドパワーだろう。前者は海上貿易で栄える英国や日本など島国の海洋国家。海軍主体で開放的。ちなみに地政学では米国も巨大な島国と考える。後者はロシアや中国など陸続きの国境がある大陸国家を指す。陸軍重視で閉鎖的な傾向にある。
ヒトラーが信奉?
「禁じられた学問」だった地政学
最近では、地政学という語がメディアをにぎわす機会は少なくないが、かつてこの学問には、タブー視されていたという「黒歴史」があった。