アメリカのバイデン大統領Photo:AP/AFLO

ロシアのウクライナ侵攻で高まる台湾有事の懸念で、“戦略物資”の半導体の争奪戦が激化するのは必至だ。米国政府が半導体の「国産化」の動きを一段と強めており、その影響が日本にも及んでいる。台湾TSMCが熊本県に工場を建設するのに続いて米インテルが日本に上陸する。『混迷ウクライナ』の#12では、半導体をめぐる地政学のメカニズムを読み解く。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

ウクライナ侵攻のプーチン批判と
半導体“国産化”を強調したバイデン

「プーチンはかつてなく孤立した」――。

 3月1日、バイデン米大統領は一般教書演説で、ロシアのウクライナ侵攻を痛烈に批判した。この演説で、バイデン氏がロシアのプーチン批判に続けて強調したのが「中国に打ち勝つ」という文脈で、半導体の米国内生産を強化する方針だった。

 バイデン氏が連邦議会に訴えたのは、520億ドル規模の補助金を盛り込んだ半導体支援法の早期成立だ。これが成立すれば、台湾TSMCをはじめ、米国内に建設する半導体工場に巨額の半導体の補助金が拠出可能になるため“国産半導体”の道筋を確かなものにできる。

 米国政府が半導体の国産化を急ぐ背景には、世界の半導体の製造拠点が台湾に集中する地政学リスクがあるためだ。このリスクは、2021年から深刻化した世界的な半導体不足で一段と意識され、ロシアのウクライナ侵攻で、中国による台湾侵攻の懸念が高まることになり、さらに深刻化するのは必至だろう。

 すでに各国政府間で、半導体工場の誘致合戦が激化しており、日本では21年10月に台湾TSMCの誘致に成功した。その上で、22年2月にはインテルまでも日本に上陸することが表面化した。

 気が付けば、世界の二大半導体メーカーの工場を“囲い込む”ことになった日本。ウクライナ危機が深刻化する中で、揺れ動く半導体の地政学のメカニズムを解き明かそう。