ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアからの撤退を表明する企業が相次ぐ一方、たばこ大手のJTは撤退を決めかねて頭を悩ましている。ロシアは営業利益の約2割を稼ぐ「ドル箱」市場。JTは“進むも地獄退くも地獄”のジレンマに直面しているのだ。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
ロシア事業への道筋を示せない
JTの事情とは
「身動きが取れないのは分かるが、ロシア事業への道筋を示してほしかった。こんな中途半端な対応で大丈夫なのか」――。
3月23日、東京都内でJTの株主総会が開催された。参加したある男性株主は、JTの経営陣についてこう不安感をあらわにする。
ロシアによるウクライナ侵攻で、ロシア事業から即座に撤退を表明する企業が相次いでいる。とはいえ事業停止や撤退を決めかねて頭を悩ます企業も存在しており、その一つがたばこ大手のJTだ。
というのも、JTにとってロシアは重要市場の一つだからだ。
JTは1999年に米たばこ大手RJレイノルズ(当時はRJRナビスコ)から米国外事業を買収してロシアに進出。2007年にはロシア市場に強かった英ギャラハーを買収し、以降はロシア市場でシェア首位の座を維持している。
JTの21年12月期の調整後営業利益のうち、ロシアやウクライナなどの旧ソビエト連邦中心の「CIS+」地域は約2割を占め、このうちロシアがほとんどを占めるものとみられる。
ウクライナ侵攻に伴うロシア事業への悪影響は既に顕在化している。それはルーブル安だ。