赤ちゃんに嫉妬?

佐藤:改めて認識したのは、15歳、16歳のCGのクリエイターのなかに神がかった天才がいるという事実です。彼らからすれば、30歳、40歳のおっさんなんてどうでもいい。いくらお金を持っている成功者がいても、彼らの背中なんか追いたくないんですよ。どんなに有名だろうが興味がない。べつに仕事なんかいらない。私が彼らを尊敬しても、彼らからしたら私なんかCGの分野においては何もできない人です。ヒエラルキーでは自分が完全に底辺。だからこそゼロから学ばなければならないと思い、30人ぐらいのクリエイターから技術や業界の話を聞かせてもらいました。

平尾:年齢とともに同じ価値観で凝り固まりがちなところ、異なる価値観に触れて吸収したり、自分をリセットもできる。普通はそこから飛び出すのは二の足を踏むものですが、上場企業の社長を辞めてまた新しいチャレンジをしている。今の私には真似できないですね。

佐藤:それは恐怖心の種類が違うからではないでしょうか。私は何かを確定することが恐怖なんですよ。よく言われるのは、何者かになれない恐怖です。でも私は逆で、「何者かになること」が恐怖なんです。

箕輪:そんなふうに言ってみたい。ロックスターみたいで格好いい(笑)。

超天才起業家が「赤ちゃんになりたい」と熱弁する理由箕輪厚介(みのわ・こうすけ)
株式会社幻冬舎 編集者
1985年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2010年双葉社に入社。ネオヒルズとのタイアップ企画『ネオヒルズジャパン』を創刊し、3万部を完売。『たった一人の熱狂』(著)見城徹/『逆転の仕事論』(著)堀江貴文などの編集を手がける。2015年幻冬舎に入社後、NewsPicksと新たな書籍レーベル「NewsPicksBook」を立ち上げ、編集長に就任。『多動力』(著)堀江貴文、『日本再興戦略』(著)落合陽一など、編集書籍は次々とベストセラーに。2019年一番売れてるビジネス書、『メモの魔力』(著)前田裕二も担当。
2018年8月、自身の著書『死ぬこと以外かすり傷』を発売し14万部を突破。2019年12月には『マンガ 死ぬこと以外かすり傷』も発売。出版クラウドファンディングエクソダスにて1000万円を集め、2021年1月サウナ雑誌『サウナランド』を創刊。様々なブランドとコラボレーションを行い、「サウナランド」ブランドの展開や、各地でサウナランドフェスを開催している。

佐藤:何者かになってしまったら、周りから予測されたり、周りから期待されたり、キャラが決まって目の前にレールが敷かれてしまう。むしろ、何も確定しないフワフワしている状態こそが、可能性が無限にあるということ。だから私は、赤ちゃんに嫉妬します。

箕輪:赤ちゃんに嫉妬?!(笑)

佐藤:無限大。何ものにも染まっていない。

箕輪:染まるのが嫌いですもんね。

佐藤:そうですね。確定して可能性がゼロになるのは耐えられないんです。だからすべてを捨ててゼロに戻すのは、私にとっては風呂に入るようなもの、今日もアカを落とそうという感覚です。