努力や蓄積という概念が廃れ、ゼロリセットに変わる

箕輪:以前、博多で佐渡島庸平さんと『世界2.0』の話をしていたときに聞いたのは、コンテンツは転生ものがよく売れるということです。たとえば、『生まれ変わったら大金持ちになっていた!』みたいな。要は、リセット押し放題、時代もメタバースという仮想空間で生きるようになるから、そもそも努力はしない、能力がなかったら生まれ直せばいいという価値観になってきている。努力という概念や、蓄積されていく人脈より、佐藤さん的な毎回ゼロに戻そうという考え方のほうがスタンダードな価値観になるのかもしれませんね。

佐藤:親ガチャ的な。

箕輪:そう、転生ガチャを何度でもやればいいという若者が増えるかもしれませんね。

――ということは、継続し続ける前提の企業や組織はどうなるんでしょう。

佐藤:それは残るような気がしますね。ただ、企業という体を成しているかどうかは別の話。本に書いたニコラ・テスラのように、後世に莫大な影響を与えるものの、現世に何も残せなかった人たちがいます。ゴッホもそうですね。ああいう人たちのように、心に残る概念がすべてになっていくと思っていて、形式は重要ではなくなってくるでしょう。国家もそうです。文化は残っているけど、国家はなくなっているかもしれない。社会的な遺伝子が本質であって、どういう形で組織を束ねているかという枠組みに関しては、かなり柔らかく変わっていくような気がします。

平尾:可能性が無限とは、ポテンシャルを可視化し、どこで解を極大化できるかを見極めて、より大きいほうに張っているイメージですか?『世界2.0』の中にも三次元のグラフが出てきますが、あれを見て、ポテンシャル評価を重視しているのかと思いました。

佐藤:利益に対する概念がそもそも違うんでしょうね。可能性の最大化が利益であって、収益が利益ではありません。ゆえに、可能性がもっとも広がる瞬間を利益と考え、そこにいるようにしています。

平尾:さまざまな起業家に会うと、人によって追っている指標が違いますよね。佐藤さんにも以前お聞きしたことがあって、たしかポテンシャルや成長率などの話をされていたと思います。自分とはまったく違うと感じた記憶があります。

佐藤:そうですね、追っているKPIは全然違うと思います。

箕輪:逆に、上場企業や投資家から見ると、赤ちゃんだから可能性はあるけどよくわからないとマイナス評価されませんか。

佐藤:確定したほうがわかりやすいし、投資しやすいのは事実です。それは十分わかっていますが、私はそれがベストだと思います。

箕輪:SaaS事業とか絶対にやれないでしょうね。

平尾:でしょうね。佐藤さんらしい事業ではなさそうです。