起立性低血圧の対処法、脚交差と膝の上下運動で写真はイメージです Photo:PIXTA

 寝起きや座った姿勢から起立した数分後に、立ちくらみや吐き気に襲われる「起立性低血圧(OH)」。血流が重力に引っ張られて下半身へ集まり、一過性に脳血流が不足して生じる。

 典型的には起床後の2、3分以内に生じるが、数十秒以内に上の血圧が40mmHg以上、下の血圧が20mmHg以上も下がる場合を「初期起立性低血圧」という。血流の調節をしている自律神経系の動きが鈍く、血流を上半身に押し上げる脚の筋力が弱い若い女性によくみられるケースだ。

 よほど症状がひどい場合は、血圧を上げる薬や自律神経系を刺激する薬が処方されるが、大抵は生活習慣の改善とカウンセリング、運動療法が治療の中心となる。

 カナダ・カルガリー大学の研究チームは、初期OHの“起立時症状”に対処できる二つの動作について効果を検討している。

 起立直後に失神した経験があり、月に4回以上の失神あるいは失神性の目まいを起こしている女性24人(25~38歳)に、(1)起立した直後に脚を前後に交差して、お尻と太ももの筋肉に力を入れる、(2)座ったまま30秒ほど左右交互に「膝の上げ下げ動作」をする、(3)何もせずそのまま起立する、の3パターンの動作を試してもらった。

 対処動作の効果は起立後15秒以内の血圧値や心拍数、主観的な自覚症状の変化で評価している。

 その結果、(1)と(2)の対処動作時はいずれも血圧の急激な低下が緩和され、目まいや頭痛、動悸、吐き気などの自覚症状が軽減された。

 研究者は「下半身をぎゅっと緊張させる“脚交差動作”では、下半身の血管が圧迫される刺激で、1回の拍動で送り出す血液量が増え、“膝の上げ下げ動作”では1分間に心臓から送り出される血流量が増えたのだろう」としている。

 この二つの動作の良い点は、普段の生活にすぐ取り入れられることだ。たとえば、起床時はまずベッドに腰掛けて脚を動かしてから立ち上がるといいだろう。

 初期OHを含む起床時の血圧低下は、ときに学業や仕事の支障にもなる。朝に弱い方は寝起きのルーティンとして、この二つの動作を試してみよう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)