いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた伊藤潤一氏。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。

「一流になれなくても成功できる人」の特徴Photo: Adobe Stock

超長期で利益を残す会社は何をやっているのか

私は、利益とは「人と違ったことをやった対価」だと思っています。

現実の世界ではありえませんが、仮に完全競争下の世界があったとすると、そこで人と同じことをやり続けて得られる利益は、長期的にはゼロに収斂するはずなのです。

ですから正しく言えば、「超長期で利益が残る会社はどんな会社か」という問いの答えが「ほかの会社と違うことをやる会社」だということになります。

つまり会社経営においてはもちろん、中長期の投資家にとっても、「この会社はほかとどこが違うのか」「この会社はどこがほかと比べてよいのか」「なぜほかの会社ではなくこの会社が存在するのか」を追求するのが大事なのです。

ファナックという会社をご存じでしょうか。

かつて富士通の計算制御部から子会社として独立した会社で、その会社を工作機械の数値制御装置や産業用ロボットのトップメーカーへと導いたのが創業者の故・稲葉清右衛門さんです。

当時、工作機械の制御には数値制御のほか、人間による操作や機械的な仕掛けによる制御方式がありました。

そしてその時代の市場規模は後者のほうがずっと大きかったのです。

しかしそこで稲葉さんは、あえて市場が小さい数値制御の世界を選びました。ファナックのほかにプレイヤーがほとんどいないような状況から挑戦し、数値制御装置で世界シェアトップをとる企業となったことで、同社は長期にわたり驚異的に高い利益率をほこることになったのです。

ファナックの例は、「何をとるか」の重要性を考えるヒントになるでしょう。

たとえばサッカーをやっている人であれば、誰もが「一流のサッカー選手になりたい」と思うかもしれません。

しかし、もし自分が一流になれないのであれば、コーチの道を選ぶのもよい選択肢かもしれません。ちなみに、ドイツではトップチームでのプレイヤー経験がなくとも、若くしてコーチになる人がたくさんいます。そういうシステムが機能しているのです。

ピアノなどもそうです。ピアノの演奏家として身を立てるのは並大抵のことではありません。ただ、もし演奏家になれなくても、たとえば「自分は耳の良さでは負けない」と思うならピアノの調律師になってもいいかもしれません。

ちなみに電子部品メーカーのローム創業者の故・佐藤研一郎さんは、現在のNHK交響楽団のバイオリニストだった父親を持ち、幼少期からピアニストを目指していました。

しかし学生時代にピアノコンテストで準優勝に終わったことをきっかけにピアニストの道を歩むことをやめ、その後、創業したロームを何千億円もの利益を生む企業に育て上げたのです。

まさに「正規分布の争い」から突き抜けたケースだと思います。なお、佐藤さんは若手演奏家の育成に力を入れ、公益財団法人ロームミュージックファンデーションを設立し理事長も務めていました。

「サッカーをやるなら一流選手に」「ピアノをやるなら演奏家に」といった目標を持つのはもちろん悪いことではありません。

しかし本来「何を目指したいのか」は人によって異なるものであり、道は1つではないはずです。誰もが似たような価値観を持つようになって「適材適所」になっていないのはもったいないことです。

(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)