大人の教養として世界の国々を知ろうと思った時におすすめ1冊が、新刊『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)だ。世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。本書から特別に一部を抜粋して紹介する。

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簡単におさらい! 中国の経済成長の背景と理由

 中華人民共和国はアジア大陸の東部に位置し、国土面積は世界第4位、人口は第1位、GDPは日本の約3倍の14兆7318億ドルで第2位と、いずれの面においても押しも押されもしない世界の「大国」です(2020年)。

 第二次世界大戦後、中国は欧米列強や日本の支配から脱し、1949年に社会主義体制による中華人民共和国を建国しました。

 計画経済のもと安定的な生産が確保され、国民の最低限の生活は保障されましたが、生産効率は悪く、労働者の勤労意欲も低い状態にありました。

 1978年、中国政府は停滞した経済を活性化するために、市場経済原理と外資の導入、企業・農民の経営自主権の拡大という経済の改革開放に舵を切りました。

 まず改革開放が進められたのは、輸出に便利な東部沿海地域でした。

 1980年、広東省深圳(シェンチェン)・珠海(チューハイ)・汕頭(スワトウ)、福建省廈門(アモイ)を経済特区に指定し、進出企業に対して用地取得や税制などさまざまな優遇措置を設けました。

 その後、外資導入は内陸地域へと拡大され、各地に工業団地を造成して積極的な企業誘致活動を展開しました。

改革開放以降の30年間で、GDPの年平均伸び率は約9%

 大量で安価な労働力を武器に中国経済は急速に発展。改革開放以降の30年間でGDP年平均約9%増という驚異的な成長を遂げ、「世界の工場」といわれるまでになりました。

 こうした経済発展は、国民の生活を豊かにしただけでなく、国内に巨大市場を成立させ、外国企業からの技術移転や国内の資本蓄積も進みました。

 その結果、従来の縫製や家電の組み立てといった労働集約的な部門から、電器・家電・電子機器、ICTなどの技術集約的な部門へと産業構造を高度化させ、ファーウェイやレノボ、ハイアールといった世界的な企業を生み出しました。

中国のグローバル戦略「一帯一路」とは?

 中国は、2010年にGDPで日本を抜き世界第2位になりましたが、同時に賃金水準が上昇し、労働集約的部門の国際競争力は急速に低下していきました。

 他方、国民の生活水準が向上するにつれて食料や資源・エネルギーの国内需要が拡大し、安定した輸入ルートの確保も必要になりました。

 このような状況下にあって習近平国家主席は、2013年に中国とヨーロッパを結ぶ広域経済圏構想「一帯一路」を提唱しました。

 かつて中国とヨーロッパを結んだシルクロードに見立てて、陸の経済圏を「一帯」、海の経済圏を「一路」と名付け、鉄道や道路・港湾などの交通網を整備し、参加国の投資や貿易の自由化を掲げました。

 発足当初、参加国は約50 カ国程度でしたが、その後世界経済における中国の存在感が増すにつれて拡大し、2019年には123カ国にもなっています。

中国が掲げる一帯一路:中国中央電視台(CCTV)2015 年3 月8 日、通商白書2017(経済産業省)を基に作成中国が掲げる「一帯一路」:中国中央電視台(CCTV)2015 年3 月8 日、通商白書2017(経済産業省)を基に作成

「債務の罠」に陥ったスリランカ

 こうした国家あげてのグローバル化戦略は、中国企業の海外進出を促し、工業分野だけでなくインフラ建設や金融・投資の分野にも拡大しています。

 地域的にも、賃金水準の低い東南アジアやエネルギー資源を産出する中央アジアだけでなく、アフリカや南米など世界各地に及んでいます。

 しかし、スリランカが中国からの融資によりハンバントタ港を建設したものの返済に行き詰まり、同港の運営権を99年間譲渡した事例(2017年)に見られるように、「一帯一路」は発展途上国への貿易や投資を通じて「債務の罠」を押しつけるだけであり、国際的な影響力を拡大する中国の覇権戦略であるという批判的評価が根強くあります。

中華人民共和国

面積:959.7万㎢ 首都:北京
人口:13億9789.8万 通貨:人民元

言語:中国語(公用語)

宗教:民間信仰21.9%、仏教18.3%
隣接:モンゴル、ロシア、北朝鮮、ベトナム、ラオス、ミャンマー、インド、ブータン、ネパール、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、キルギス、カザフスタン

(注)『2022 データブックオブ・ザ・ワールド』(二宮書店)、CIAのThe World Factbook(2022年2月時点)を参照

(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)