ビル・ゲイツが「手書きでメモ」を取る理由スピーチで手書きのメモを愛用する姿が目撃されているビル・ゲイツ氏(2019年10月撮影) Photo:NurPhoto/gettyimages

打ち合わせなどでノートパソコンを使ってメモを取る光景を見る機会が増えてきた。しかし、米マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏は、手書きのメモ帳を愛用している姿が目撃されている。「IT王」ともいえる人物がミーティングにパソコンを持たずに登場し、手書きでメモを残すその理由とは?(イトモス研究所所長 小倉健一)

哲学者ゲーテの言葉と通じる
ビル・ゲイツ氏の「手書きメモ」

 会議のメモ取りをノートパソコンで行う人たちが増えてきた。総理大臣や官房長官の記者会見をしている様子を見ても、記者たちは一心不乱にノートパソコンに会見内容を打ち込んでいるのが見てとれる。

 記者の場合、一刻も早く会見内容をオンラインのニュース記事に出さなくてはいけないという必要に迫られている部分もあるだろう。いちいち手書きでメモを取ってからパソコンに打ち直し、それを送信していると、ライバル社に後れを取ってしまう。

 記者たちはそんな事情からノートパソコンで打つ必要もあるが、一般企業においても同様の場面が増えているのではないだろうか。筆者も一般企業の人と打ち合わせをする機会があるが、現場の人はノートパソコンにメモを必死で打ち込んでいる。一方、経営者になるとそもそもメモを取らない人が増える。

 筆者はというと、手書きのメモ派だ。ごちゃごちゃと手書きのメモをしていると話している相手にのぞき込まれているような気もして恥ずかしいが、とにかくインプットについては手書きの習慣を残している。ちなみにこの原稿はパソコンで打っているが、それには理由がある。

 哲学者のゲーテは、「物事を明確に書き記したいときには、まず考えを明確にせよ。崇高なものを書くためには、まず崇高な心を手に入れよ」という言葉を残している。筆者が、メモは手書きで原稿はパソコンで書くのは、それと似たような理由からだ。

 そしてその理由は、米マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏の思考法にも通じるものがある。実はあの「IT王」も、会議やスピーチに手書きのノートやメモを持参するのだ。