コロナ禍のリモートワークなど生活スタイルの変化により注目されたのが、資産形成に対する関心が高まったこと。特に、20~30代の若い人たちの間で、つみたてNISAの口座開設が急増した。そんな状況の中、つみたてNISA本の決定版ともいえる『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)が3月16日に発売。本連載では、つみたてNISAを利用して長期投資や資産形成をしてみたいという人に向けて、失敗しないつみたてNISAの賢い選び方・買い方について、同書から抜粋して公開する。「つみたてNISAってなに?」という投資ビギナーの人でも大丈夫。基本的なところからわかりやすくお伝えしていくので、ぜひ、お付き合いください。

長期投資のプロだけが知っている 資産作りに欠かせないたった一つの視点Photo: Adobe Stock

「一般NISA」を積極的に活用したのは、
投機に近い売買を行う投資家だった!?

 時限立法とはいえ、毎年120万円の非課税枠が設けられた一般NISAですが、実際に制度がスタートしたところ、大きなイレギュラーが生じました。

 おそらく金融庁は、毎月一定額をコツコツ積み立てる少額投資家にとって使い勝手のいい非課税制度として、一般NISAを広めたかったのだと思います。

 だからこそ、当初は年間100万円だった非課税枠を、2016年1月から120万円に引き上げたのです。これにより、毎月10万円というキリのいい金額で積立投資ができることになりました。まさに、積立投資を行う人たちの利便性向上のための制度改正でした。

 しかし、一般NISAの積み立てによる利用は、総口座数の1割以下(金融庁『つみたてNISAについて』平成29年6月)という結果になっています。

 現実に、一般NISAを積極的に活用したのは、どちらかというと投機に近い売買を行う投資家でした。

 彼らには、年間120万円の枠内で毎月10万円ずつ積立投資をするなどという発想はありません。

 変動が2倍のレバレッジ型のETFや、値の上下を当てることで儲かるブルベア型ファンド、超短期で値上がり益が期待できる中小型株などを、非課税枠いっぱいまで一括投資で仕込んでおき、値上がりしたら売却して、その値上がり益を非課税で受け取るという、長期の資産形成とは全く別次元の行為に及んだのです。

 金融庁としては、せっかく個人の資産形成に資する制度を創ったのに、その想いが完全に踏みにじられてしまいました。