しかしこれ以上、環境を犠牲にしてまで高成長を続けることはできなくなった。新しい産業モデルへのチェンジは、高成長より中速成長のほうが向いている。そのなかで、産業構造の高度化、消費社会の育成を目指さないと生き残れないという認識が、政府関係者の間で主流になりつつある。

 つまり、諸外国が中国に高成長を期待すること自体が、すでに意味がなくなっているということ。今後は中速成長に主眼が置かれるだろうし、諸外国もそうした認識で中国を見つめるべきだ。

米国への警戒感は想像以上に強い
中国が「拡張主義」に走れない理由

――新指導部は、国際社会でどんな立場を築こうとしているのか。

 当局は、自らが世界的な大国になったという認識を持っており、すでにいくつかの新しい価値観が見え始めている。

 最も重視するのは、米国との関係を再構築することだ。政府関係者の間では、中国の急速な追い上げに警戒感を持った米国が自分たちを牽制してくるのではないかという不安が、内心強い。

 最近中国内でさかんに言われているのが、「米国の国力の3分の2の罠」ということ。つまり、米国の国力に対して3分の2まで追い上げた国は、米国に潰されるという俗論だ。過去のドイツ、日本、旧ソ連などがそれに当てはまる。こうした不安もある中で、新指導部は米国との関係強化に動くはずだ。

 また、IMF、世界銀行、WTO、国連など、国際経済・金融における発言力の拡大も重視している。背景には、新興国の一員として途上国の利益を擁護するという大義名分もある。さらに、文化発信の工場を目指すソフトパワーの拡大、FTAなどを軸にした地域経済圏の構築も重視している。

――中国との間に尖閣問題を抱える日本にとって最も気になるのは、中国の外交政策だ。中国が軍事力を強め、拡張主義を目指す可能性はあるだろうか。

 一部には、中国が軍事力を拡大して資源の強奪に動くのではないかという偏った意見もあるが、私は拡張主義には走らないと思う。

 その理由としては、第一に、今後中国はエネルギーや食料の自給率を上げる方針を打ち出している。資源などの対外依存度が高まったら、いざ諸外国と対立したときに禁輸措置などをとられて、自国民や産業を養えなくなってしまうからだ。