年頭にその年の世界10大リスクを占う“Top Risks”が、今年も米国の民間シンクタンク、ユーラシア・グループから発表された。その中では10大リスクの5番目として日本・イスラエル・英国の「JIBs」3ヵ国が迎える危機、7番目にアジアの地政学的問題が言及されている。同グループの代表を務める政治学者イアン・ブレマー氏に、“Top Risks 2013”から、日本に関係するリスクについて詳しく聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 大野和基)
安倍政権の大きな課題は
外交の方向性
地政学的リスク分析を専門とするアメリカのコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長で、ワールド・ポリシー研究所の上級研究員。スタンフォード大学で博士号取得後、世界的なシンクタンクであるフーバー研究所の研究員に最年少25歳で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。グローバルな政治リスク分析には定評があり、ロシアのキリエンコ元首相やアメリカの民主・共和両党の大統領候補者らに助言を行ってきた。1969年生まれ。Photo by Marc Bryan-Brown
――日経平均株価が上昇し、さらにドル高になり、新しい安倍政権は出だし好調のように見えます。安倍氏が提唱する、いわゆるアベノミクスという経済対策をどう見ますか。
市場はアベノミクスを確かに好んでいるように見えますね。市場は変化を求めています。安倍氏の言う景気刺激策が実行されると考えているのでしょう。原発に対する考えは、彼が原子力産業に近いことと同様、これも市場は肯定的に捉えるでしょう。以上は驚くに値しません。
安倍氏にとって大きな問題は、国際的な面での方向性です。私はその方向性を三つに分けて考えています。
まず最初は、安倍氏が中国について、どれくらい過度に自己主張するかです。2つ目はTPPについて、どの程度前進するかです。日本国内の視点から見れば、前進させるのが非常に難しい問題です。3つ目は日本は一体どこに向かうのか、という根本的な問題です。TPPや中国問題で、アメリカと友好的な関係になるのかどうか、アジアの他の国とよりよい関係を築くことができるのかどうか。
安倍氏が就任してすぐに韓国へ特使を送ったことには、個人的には非常に希望を持ちました。韓国との関係を改善していく点で、非常に重要なステップだと思います。日韓関係を改善することは非常に重要です。