景気を大きく失速させかねない「財政の崖」を、年初に辛くも回避した米国議会。しかし抜本的な解決には至らず、民主党と共和党の駆け引きが続くなか、不安は燻る。一方で、国内消費は回復傾向にあり、新興国経済が不調のなかで、世界経済に占める米国経済のウェイトは相対的に高まっている。2013年、日本のみならず世界経済を大きく左右する米国経済はどこへ向かうだろうか。第一生命経済研究所の桂畑誠治・主任エコノミストに詳しく聞いた。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

「財政の崖」は辛くも回避されたが
2013年も緊縮財政不安は避けられない

――ブッシュ減税の期限切れと歳出の自動削減などが重なり、急激な景気失速が懸念されていた米国の「財政の崖」が、期限となる1月初頭にギリギリで回避された。富裕層を除く45万ドル以下の世帯に対する減税は恒久化されたものの、歳出の自動削減はわずか2ヵ月先送りされただけ。増税と歳出削減で対立してきた民主党と共和党の駆け引きは、2013年以降も続く。今後の財政問題をどう見ているか。

かつらはた・せいじ
第一生命経済研究所主任エコノミスト。専門は米国経済、金融市場、海外経済総括。1969年生まれ。三重県出身。法政大学卒。92年日本総合研究所入所。95年日本経済研究センターへ1年間出向。96年より為替相場、欧州経済、金融市場等を担当。99年丸三証券入社、日本、米国、欧州経済・金融市場等を担当。2001年より現職。著書に『資源クライシス』(日本実業出版社)など。

「財政の崖」は、2013年間で総額8000億ドル規模の財政緊縮となり、何の対応もせずに崖から落ちていれば、米国経済のリセッション入りは避けられなかった。このため、財政の崖回避法である「2012年米納税者救済法」のような法律の早期成立が期待されていた。

 ねじれ議会の弊害によって、年明け1月3日の成立となったが、危機はギリギリで回避された。だが、問題を先送りした部分もあり2013年に入ってからも、ねじれが続く新議会でも財政問題への対応が必要となっている。

 財政の崖で先送りされた問題とは、2ヵ月間延長された自動歳出削プログラムである。これを完全に停止するためには、2月28日までに中長期の財政赤字削減計画を策定する必要がある。再び数ヵ月間延長される可能性もあるが、その場合でも中長期の財政赤字削減計画の策定は困難であろう。

 共和党は財政の崖回避のために増税を受け入れたことから、今度は歳出削減によって財政赤字を削減するべきと主張している。一方、民主党は歳入を増やす政策も加えるべきと主張しており、議論がかみ合っていない。最終的には、自動歳出削減プログラムは開始される可能性が高い。