東京証券取引所Photo:123RF

東京証券取引所がこの4月に市場を再編し、プライム、スタンダード、グロースの3市場編成となった。各市場には新たな上場基準が設けられているが、基準未達のまま「経過措置」でプライム市場入りした企業も多い。こうした状況下では、どの企業に投資すべきか迷っている投資初心者もいるだろう。その助けとなるべく、東証再編の現時点での課題や、「絶対にやってはいけない」ポイントについて詳しく解説する。(経済評論家 加谷珪一)

東京株式市場の
地位低下が顕著に

 東京証券取引所は2022年4月、従来の1部、2部といった区分けを廃止し、新たにプライム、スタンダード、グロースという市場区分に再編した。簡単に言ってしまえば、プライム市場はグローバルに通用する上級市場、スタンダードは一般市場、グロースは新興企業向け市場ということになる。

 だが、多くの1部上場企業がプライムに横滑りし、しかも基準未達のまま経過措置によって移行した企業も少なくない。上場維持基準を厳しくすることで日本市場の地盤番沈下を防ぐという改革の趣旨を考えた場合、経過措置企業が多いことは問題である。詳しくは後述するが、個人投資家はこうした企業への投資に慎重になった方がよいだろう。

 株式市場の改革については以前から議論が続いており、その重要性が指摘されていながら、なかなか実現しなかったという経緯がある。

 かつての東京株式市場は、ニューヨークやロンドンと並ぶ世界の主要市場の一つと見なされていたが、日本経済の低迷に伴い、市場の地位低下が顕著となっている。東証の相対的な時価総額は下がる一方であり、すでにニューヨーク市場やナスダック市場の4分の1程度の規模しかない。

 香港証券取引所と上海証券取引所を合わせた中国市場の時価総額は東証の2倍以上もあり、日本はもはやアジアのローカル市場に成り下がっている。

 近年、世界の機関投資家が運用基準とするMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数の構成銘柄から日本株を外す動きが顕著となっており、多くの日本企業はグローバルな投資家にとって投資対象ではなくなりつつある。

 優良な機関投資家から見放された市場に上場している企業は、資金調達環境がジワジワと悪化するので、長期的に見ると業績のマイナス要因になる。こうした事態を打開するため、国内では市場改革が何度も議論されてきたが、現状を維持したい事業会社からの反対意見が多く、改革はなかなか進まなかった。

 紆余(うよ)曲折を経て、ようやく今回、本格的な改革がスタートしたわけだが、投資家の評判は良くない。