週休3日制で「収入減の未来」が
やってくるかもしれない理由

 もうひとつの懸念が「週休3日制だと収入が減るのではないか?」というものですが、これも実は懸念通りの未来がやってくる可能性があります。

 そもそもの世界経済の大問題として、AIが進化することでDXが進み、人間のすべき仕事が減少していくという未来予測が存在します。

 これは経済学的には、ある会社での仕事は減るだろうけれども、イノベーションが起きることで別の産業が勃興してそちらで新しい仕事が生まれると説明されます。しかしそれを労働という側面で見れば、既存の勤務先では仕事が減るので、他の副業を見つけなければいけない未来がやってくることを意味します。

 日本の労働法規では、一度雇用した正社員はクビにすることができません。多くの大企業が中高年の社員をリストラしたほうが利益は上がると分かっていても、会社が傾かない限りはそこに踏み込めないのは法律の壁があるからです。

 ところが、勤務時間を減らすだけなら実質的なリストラ効果が生まれる可能性があります。これまで週40時間働いていた正社員の勤務時間の定義を、週32時間に変更することで給与水準を20%カットできる可能性が出てくるわけです。

 このあたりの議論はこの先、どのような法律にすべきかが国会でも議論されていくことでしょう。ただ企業の競争力ということを考えると、この問題についてはある程度、大企業側の要望を社会は受け入れざるをえないのではないでしょうか。

 最後に、一部の日本人にとっては都合が悪い話をして終わりましょう。実はOECDの労働時間比較には、家事にどれだけ時間を費やしているのかの横比較も存在しています。日本人男性の場合、会社で勤務する時間が長すぎる関係で、先進国の比較で見ると圧倒的に家事を手伝っていない傾向が見られます。

 もし週休3日制が定着すると、もうそんなことは許されないでしょう。「家事は家族で分担する仕事」という、当たり前の未来も到来する。それが週休3日制の日本社会に対する一番の貢献になるのかもしれません。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)