日本が週休3日制に踏み切るには
「外圧」が必要

 このOECDの横比較から、日本企業は生産性を上げる余地がまだかなりあるということが分かります。背景として、日本にはそもそも無駄な会議や無駄な仕事に問題意識を持たない社会文化があります。さらに、デジタルに疎い経営者や管理職が多いという実態もある。これらを打破するには、制度そのものを変えていかなければならないという制約があります。

 だからこそ、状況を変えるには外圧が有効です。

 コロナ禍で日本企業が一斉にリモートワークを導入できたのはこの外圧で、もしコロナがなければ今でもほとんどの企業では管理職が、「zoom会議? だめだめそんなもの。会議は会議室でやるものだ」と主張していたことでしょう。

 日本政府や経団連のような組織が「週休3日制に踏み切る」と圧力をかければ、各企業も真剣に週休3日が成立できるように頭をひねらなければならなくなります。週休3日制が外圧になれば、日本の職場は変わらざるをえないのです。

のんびり働いていた企業は
仕事内容が厳しくなる

 さて、ここまでは良いことばかりですが、不安も残ります。そしてそれらの不安の一部は現実化するでしょう。

 まず2番目の懸念ですが、これまでのんびりと仕事ができていた企業では、生産性が上がることで仕事の内容が厳しくなる可能性があります。

 古い話なのでできれば笑い話として聞いていただきたいのですが、1987年にJRが誕生した当時、JRの社員の方が、「いやあ大変です。国鉄時代の3倍も働いていますよ」とおっしゃっていました。しかし、コンサルが調べてみたら、民営化後も私鉄とは生産性が倍違っていた。本当は6倍忙しくなる余地があったのに、大組織の内部にいるとそれに気づかないものです。

 週休3日制導入の裏の効果が生産性向上であるとすれば、当然、業務が効率化していく方向に力が働きます。会議の出席者数は本来必要な人だけに減るでしょうし、無駄な書類は作らないようになるわけです。

 それは会社にとっては良いことなのですが、実はこれまで無駄な会議で発言もせずに座っていることが許されていた人は、「会議に出ずに他の仕事をちゃんとしろ」と命令されることになるわけで、当然仕事は以前よりもきつくなります。

 つまり、組織全体で「なんとか週4日間働いて家に帰ろう」とする未来では、当然のように今よりも仕事の密度は上がるのです。