また、「若手の活躍の場を作る」という方針も掲げ、社内の活性化に注力した。活躍した社員を表彰したり、昇格祝いのポスターを貼ったり、新入社員の机にバルーンを掲げたりもした。中でも、目標を達成した部署に飲み代と翌日の半休を支給する「社内飲み会」には大きな効果があった。

 会社が「社員を大事にする」と呼びかければ、社員も「会社を大事にしよう」と応える。考えてみれば非常にシンプルなことだった。

◇不安や迷いを断ち切るためにしたこと(藤田晋)

 M&Aは資本主義社会において不可欠な経営行為だと捉えている堀江氏とは対照的に、藤田氏のモットーは「事業を自分たちでゼロから創って伸ばす」ことだ。「小が大を呑むような買収では、せっかく育てた企業文化が崩れてしまう」と考えたからだ。ライブドアがプロ野球に参入しようとしていた2004年頃は、買収を発表するだけで株価が上がる時代だったため、藤田氏の方針には投資家から疑問の声が相次いだ。

 そこで、藤田氏は「大型の買収に踏み切らない理由」を自身のブログに書いて社内外に公言した。目標はほかの人に伝えると叶いやすくなるという「宣言効果」をねらい、迷いを断ち切るために活用したのだ。やがて、時代に逆らう方針が注目を浴び取材が増えていく。その度に藤田氏は自分の考えを繰り返し伝え、社外の人に明言することで、自分の心がブレなくなっていった。

◇塀の中で学んだこと(堀江貴文)

 2006年、証券取引法違反容疑で、堀江氏は逮捕された。「ライブドア事件」で収監された堀江氏は、刑務所生活で「自由とは心の問題だ」と学んだ。頭の中にまでは誰も手出しができない。獄中でも、思考に没頭している限り、羽が生えたように自由だった。

 獄中のストレスのほとんどは人間関係だった。逆に、刑務作業はストレスになるどころか、ストレスを跳ね飛ばすのに役立った。紙袋を折るという作業を課せられたときは、初日はノルマの50個達成がギリギリだったが、試行錯誤を重ね、3日後には79個もの紙袋を折ることができた。「仕事の喜び」とは、こうした能動的なプロセスの中で生まれる。長野刑務所に移送されてからは介護衛生係として働き、介護士的な仕事を一通りこなせるようになった。最初は積極的にやりたい仕事ではなかったが、自分の成長を実感することは楽しかった。