浅田・羽生両選手が“折れない心”を持てる秘密怒られても大丈夫?人をどん底から救う「レジリエンス」という思考法、知っていますか?

 そろそろ人口に膾炙しつつあると言ってよさそうな「レジリエンス」という用語、読者の皆さんはすでにご存じだろうか? レジデンス(マンション)の類義語ではない(笑)。言葉自体は知っていても、その意味するところがいま一つピンとこない、という向きも少なくないのではないだろうか。

 何を隠そう、当の筆者も、この「レジリエンス」という概念を知ってからまだ日が浅い。しかし、この「レジリエンス」はいま、アスリートを支える思考法としても大注目だ。フィギュアスケートの浅田真央選手がソチオリンピックのショートプログラムで“どん底”に陥りながらも2日後のフリープログラムでは自己ベストを更新した。また、羽生結弦選手は、試合の直前練習で他選手との衝突で怪我を負ったものの、見事準優勝を果たした。この危機を脱したしなやかな適応力、すなわち復元力こそ「レジリエンス」という概念である。

 そこで今回は、「レジリエンス」を通して見た「健康」について、探ってみようと思う。

「サステナビリティ」のポジションを
奪いつつある「レジリエンス」という言葉

 話は遡るが、かれこれ十数年前、ロハス(LOHAS=Lifestyles Of Health And Sustainability)という用語が、エコや環境、スローライフといった文脈で持て囃された時期があった。拙訳すれば、「健康で持続可能な(持続可能性を重視する)生活様式」とでもなるだろうか。

 元々は1998年に米国の学者がマーケティングコンセプトとして提唱し、その後同国の調査機関NMIが、「環境と健康に関心があり、社会に対する問題意識を持ち、自己啓発・精神性の向上に関心が高く、実際の行動に移す人々」とロハス層を定義、日本では2002年9月に某全国紙が紹介し、一気に広まった。

 日本では当初、ライフスタイルに関する一つの主義を表す言葉として使われていたようだが、その後、サステナビリティ(持続可能性)という用語がロハスから切り離され、ライフスタイルとも健康とも直截関係のない分野でも盛んに使われるようになった。とくに環境分野では、この「サステナビリティ/持続可能性」が流行し、一種の合い言葉のように持て囃された。

 例えば、会食の場面であれば、「これMy箸。割り箸よりエコだから」などと聞かされると、筆者は腹の底で、〈よく分かってねぇな。かっこいいと思ってんのか!〉と毒づいていたものだ。

 閑話休題。ところがここに来て、サステナビリティは落日を迎えているという(例えば、『レジリエンス 復活力』)。同書の序章にはこう書かれている。