予想を超えた経済制裁
基軸通貨ドルが武器に
ロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁の苛烈さは予想以上だった。特に注目すべきは、米国が国際基軸通貨ドルの持つ圧倒的な優位性を使った金融制裁に踏み切ったことだ。
金融機関に対して対ロシア取引を規制すると共に、ロシアの一部銀行をSWIFT(国際銀行間通信協会)の国際決済ネットワークから排除したほか、ロシア中銀が西側中央銀行に預けている外貨準備を凍結した。
米ドルを基軸とする国際金融システムは、政治や地政学の問題からは一定の距離を置き、自由でオープンな性格を維持してきた。それが故に、必ずしも米国と利害の一致しない国も決済や資産運用で米ドルを安心して利用し、米ドルの圧倒的な存在感が保たれてきた。
今回の出来事は、米国が地政学的な紛争の解決手段として金融制裁を行うことに躊躇しない時代に入ったことを意味する。これは不可逆的な変化であり、今後少しでも米国と事を構える可能性のある国は、米ドルへの過度の依存を避ける取組みを本格化しよう。
特に米国との覇権争いを行う中国は、台湾問題を巡る戦略を考えるうえで、今回の対ロシア金融制裁を深刻に受け止めたに違いない。中国は以前から、脱ドル化を進めるために人民元の国際的な利用促進に取り組んできたが、米ドルに対する代替的な国際通貨として人民元を提供できるようになるには、大きな課題が立ちはだかる。