ロシア軍の装甲車が列を組んでウクライナ北東部のこの村を通過したのは、軍事侵攻が始まった日だった。湖畔にアシが生い茂り、青いドームの教会がある村は、それから3週間静かなままだった。ロシア軍は3月16日に戻ってきた。ロシアの補給線に対するウクライナ側の奇襲に使われた可能性のある携帯電話の動画などを持っている者を探していた。近くで戦車1台が破壊されており、これを襲撃した地元男性イワン・デミドフ氏をロシア軍は殺害した。さらに村を去る前に一軒ずつ民家を訪れ、共犯の可能性がある者を捜索した。3月末になるとウクライナ北部の残りの地域からもロシア軍は撤退した。ここに彼らがいた名残は、ロシア製戦車の残骸や軍の糧食だけだ。だがロシア軍が去ると地元男性6人の消息が分からなくなっていた。こうした行方不明の住民がウクライナ全土の村や町で増えている。