村上  そのあと外資を6社ぐらい渡り歩くわけですけれども、グーグルに限らず、どの会社も基本的に言うと、やっぱり世界陸上で戦っているようなビジネスが多いですね。毎日オリンピックみたいな感じがしていましたけどね(笑)。まあ、ビジネスの世界ではどうしてもこぢんまりしてしまい、どうも国内に閉じこもりがちなんだと思います。これまで日本はですね。そういう時代は終わった、ということだろうと思います。外資、日本企業に関わらず。

世界を迎え撃つために、<br />私たちが今起こすべきアクションとは?東京大学伊藤謝恩ホールで行われた講演風景

田村 まさにそうだと思います。変化を頭に入れて準備をしていく。そして自分の差別化を考える。ところで為末さん、いきなり世界に出ることに怖れはありませんでしたか?

為末 怖さもあったけれど、怖さ以上に野心がありましたね。世界に行かないと潮流に乗れないっていうのを、23歳ぐらいのときに思い、いきなり行って、そこから始めました。
  日本にいて、なんとなく日本一を何回か繰り返すという成功モデルはあったんですけど、そうじゃなくて、今までにない中に入りたいなという思いがあったので、それのほうが勝ったという感じですかね。
  僕は意思が弱いので、日本から準備して行くのは、たぶんできなかった。いざ海外で転戦していると、何はともあれ馴染むしかないんです。結果として、いきなり飛び出したほうが早かったという感じはあります。

田村日本にいると変化に気づきにくいというお二人の話、たしかにそうですね。でもこれからは、自分の身は自分で守らなきゃいけない。当たり前の話ですけど、今まで日本は守ってくれたんです。国が守ってくれた。企業が守ってくれた。地域社会が守ってくれた。でも今は、企業にしても、どこからライバルが現れるかわかりません。だから、雇用を長期に保障するということがなかなかできない時代になっています。地域社会もしかり。
  自分の身を守るという意味でも、外に出て変化を知り、差別化をしていくことが大事ですね。隣の中国であれば英語も中国語もできる。インドであれば2桁の掛け算が暗算でできる。こんな具合に、処理能力が非常に高くてガッツがある連中が世界でバンバン活躍している。彼らとの競争が、日本の中でも始まっているのです。彼らが日本語を身につけてしまったら、それこそ太刀打ちできないかもしれません。