世界大会において、トラック種目で日本人初となる2つのメダルを獲得し、3大会連続オリンピックに出場した元プロ陸上選手。2010年、アスリートの社会的自立を支援する「一般社団法人アスリート・ソサエティ」を設立。現在、代表理事を務める。2012年6月現役活動に終止符。Twitterフォロワーが13万人を超え(2013年1月現在)、「走る論客」としてその発言にも注目が集まっている。
(撮影:公文健太郎)
為末 僕は世界で3番(銅メダリスト)なので、「こうやったら勝てました」っていうふうに言いにくいものがありますが(笑)。
田村 すごいですよ。70億人の3番ですよ。
為末 僕はもともと100メートル選手でしたが、どうやらこのままでは一番になるのは無理だと限界を感じ、400メートルハードルに転向しました。歩幅を合わせるなど動きが複雑なことや、ハードルを越えるという走る以外の要素である空間把握の能力も必要など、これってすごく日本人に向いているんじゃないか、でもまだ、みんな気づいてなさそうだというので、ハードルに入っていったんです。
だから、まずはやりたいことよりも自分が勝てる場所。自分が勝ちたいというよりは、このフィールドに行けば勝てるんじゃないかという「場」を選ぶっていうのは、すごく大事な気がします。
村上 そうですね。今、為末さんのお話を聞いていて、あ、そう言えば、私も勝てる戦場を選んできたというところは否めないなと思います。
田村 勝つためには、まずは自分が勝てる戦場を選ぶこと。その通りだと思います。差別化と言ってもあっという間に淘汰される時代です。だからこそ、「誰よりも早くやる」というのも差別化の一つ。村上さんは、まだパソコンが一般に普及していない時代から、「コンピュータ」という強みを持って外資系企業を渡り歩き、グーグル日本法人名誉会長(当時)ですもんね。