「社内プレゼン」は、ビジネスパーソンにとって必須のスキルです。どんなによいアイデアがあっても、組織的な「GOサイン」を得なければ一歩も前に進めることができません。そのためには、説得力のあるプレゼンによって決裁者を説得する技術が不可欠なのです。
そこで役立つのが、ソフトバンク在籍時に孫正義氏から「一発OK」を何度も勝ち取り、独立後、1000社を超える企業で採用された前田鎌利氏の著書『完全版 社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)です。
本書では、孫正義氏をはじめ超一流の経営者を相手に培ってきた「プレゼン資料」の作成ノウハウを、スライド実例を豊富に掲載しながら手取り足取り教えてくれます。読者からは「大事なプレゼンでOKを勝ち取ることができた」「プレゼンに対する苦手意識を克服できた」「効果的なプレゼン資料を短時間で作れるようになった」といった声が多数寄せられています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、社内プレゼンで「一発OK」を連発する人がひそかに意識している、「写真」の活用法について解説します。
共感を得るための「写真」は逆効果
社内プレゼンにおいて、ビジュアルは重要な要素です。
しかし、勘違いをしてはいけません。社内プレゼンで求められるのは、見た目に美しい、カッコいいビジュアルではありません。
大切なのは、決裁者がスライドを見た瞬間に「なるほど!」と納得してもらうこと。その一点のために、必要なビジュアルだけを活用するようにしてください。そして、理解を妨げるようなビジュアルは、いかに見栄えがよかったとしても排除する。それが、社内プレゼン資料のポイントです。
また、社内プレゼンでは、TEDのプレゼンのように、聴衆の感情を揺さぶったり、インパクトを与えることを意図したビジュアルも不要です。
たとえば、社外のクライアント向けに、社員研修プログラムを提案するプレゼンをする場合には、下図のようなスライドをつくって、営業相手の感情に訴えると効果的です。
これは、ワンカラー効果を活用したスライド。疲れたビジネスマンの写真をモノクロにして、危機感を煽る赤字で「社員のモチベーション低下」などとテキストを配置することで、「そうなんだよ、ウチの社員も元気がないんだよなぁ……」などと共感を得ることができます。そして、営業相手をプレゼンに引き込む効果が期待できるわけです。
しかし、自社の社員研修プログラムの改善を提案する社内プレゼンで、このようなスライドは必要ありません。
なぜなら、決裁者はプレゼンに耳を傾けるつもりでその場にいるからです。プレゼンに引き込もうとする必要が、そもそもないのです。むしろ、このようなスライドを見せても、「そんなことはいいから、さっさと本題に入れよ」と思われるだけ。決裁者は忙しく、限られた会議時間でいくつもの決裁をしなければなりません。プレゼンは最短距離で終わらせるのが鉄則。余計なビジュアルは、逆効果なのです。
「写真」で直感的に理解させる
社内プレゼンで効果的なのは、決裁者の理解を助ける写真です。
下図をご覧ください。これは出版社の社内プレゼン資料。
一方は「紙の書籍」の売上推移、もう一方は「電子書籍」の売上推移をまとめたものです。このような場合には、「紙の書籍」のスライドに書籍の写真を置き、「電子書籍」のスライドにはタブレットを置くと、いちいちテキストを読まなくても一目で理解できます。このようなケースで、写真を使用するのはきわめて効果的です。
ただし、誤解を招いたり、余計なツッコミを生む恐れがあるときは、写真を使用しないほうがいいでしょう。
たとえば、下図のように、「20代女性のデータ」に「20代とおぼしき女性」の写真を使い、「30代女性のデータ」に「30代とおぼしき女性」の写真を使うと、まぎらわしいだけ。このような場合には、写真は使わず、「20代女性」「30代女性」とテキストを大きく表示するほうが、よほど効果的です。
このように、社内プレゼン資料においては、写真を使用することに意味があるのではなく、あくまでも「わかりやすいこと」に意味があります。常に決裁者の立場に立って、「理解の助けになるか?」と自問しながら写真の使用不使用を判断するように心がけてください。
(本稿は、『完全版 社内プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)