中国のスーパーで魚にも二次元コード!食の安全危機で防衛策進化の皮肉上海のフーマーの鮮魚売り場では、消費者が二次元コードを読み取り、産地や検査などの情報確認ができる(2019年筆者撮影)

ロックダウン下の上海で、市政府からの配給品に「期限切れ」や「ニセブランド」などの“問題食品”が紛れ込んだ。食品の安全性に敏感な上海市民が驚いたのは、中国の地方都市にはいまなお怪しげな食品メーカーが数多く存在するということだった(『中国・上海市民が「異臭ハム」配給に憤り!食品偽装が横行する深刻な理由』参照)。一方でこれに対し、上海市民は食品がいつどこで作られ、運ばれてきたのかという生産履歴の追跡で、自己防衛に出た。今回は中国の食品トレーサビリティについて探ってみた。(ジャーナリスト 姫田小夏)

中国食品の安全性が問題視された2000年代

 トレーサビリティとは、「製品がどこから来たのか」をさかのぼって“見える化”する仕組みだ。これによって、調達・生産・消費までの過程が追跡できる。製造業では一般的なシステムだったが、あるきっかけで、食品業界において注目されるようになった。

 国際社会がトレーサビリティに目を向けるようになったのは、2000年代初頭のこと。狂牛病がまん延したことが契機となった。日本では2003年から「牛トレーサビリティ法」に基づいて、牛にタグを装着し、個体識別番号でその牛の情報を管理するシステムを開始した。

 2000年代といえば、日本でも食品の安全問題が噴出した時代だ。中国産の食品に依存している部分も多く、発がん性物質が検出された中国産輸入しいたけや、食後にめまいや嘔吐を引き起こした冷凍ギョーザなどが大問題となった。

 また、中国国内でも食品をめぐる犠牲者は後を絶たず、2008年には中国大手乳製品メーカー「三鹿集団」が製造した粉ミルクに化学物質のメラミンが混入した「メラミン事件」が起こった。さらに2014年には、中国の食品加工会社がマクドナルドに賞味期限切れの鶏肉を納入していたことが発覚した。

 こうしたことから「食の安全」は多くの消費者が注目するようになったが、それでも食品業界などの意識や技術はあまり進化してこなかった。ところが、最近になってそれが格段に変わってきているという。