“共済依存”農協が危険度上位に
1位JA京都にのくに、2位JA堺市

 ワースト1位だったのはJA京都にのくにだ。この農協は事業総利益全体に占める共済事業の割合(共済依存度)が46.9%に上り、試算対象農協中2番目に高かった。

 最も共済依存度が高かったのは被害額18億円に上る共済不祥事が起きた長崎県のJA対馬で同50.4%だった。

 金融の減益額を農業関連事業の増益でカバーできればよいが、農業部門の体制が弱体化した農協にはできない相談だ。その結果、農協ではリストラや支店の閉鎖が相次いでいる。農協が負のスパイラルから脱するのは難しいだろう。

 損益試算で算出した金融部門の減益額で、25年度の税引き前利益をはじき出したところ、試算対象510JAの「4分の1」に相当する、118JAが赤字に転落した。

 本業の農業をおろそかにして金融依存を続けてきた「消える農協」をあぶり出す「JA赤字危険度ランキング完全版」については、特集『儲かる農業 堕ちたJA』(全17回)の#1『118農協が赤字転落!JA赤字危険度ランキング【ワースト510・完全版】』で詳報している。試算方法の詳細は完全版の「表の作成方法と見方」を参照してほしい。

新たな試算方法導入で順位激変!
赤字転落の危険度を正確に反映

 農協の減益要因は大きく二つある。一つ目が信用事業(銀行業務)における農林中央金庫からの運用益の還元(奨励金)の減額。二つ目が共済事業(保険業務)の縮小である。日本銀行によるマイナス金利政策の影響で2018年度以降、金融2事業の収益は急速に悪化している。

 信用事業と共済事業という二つの稼ぎ頭を失うインパクトは甚大だ。25年度の両事業の減益想定額は最大19億円(JA山口県)に達した。

 ダイヤモンド編集部は過去にも農協の財務データから減益額を割り出す試算を行っているが、今回の特徴は共済事業の減益額が大きくなっていることだ。前出のJA山口県の減益額の内訳は、信用事業6億円に対して共済事業13億円である。

 共済事業の損益が悪化する理由は、保険加入者の高齢化で収益の減少が続くとみられるからだ。

 おまけに農協では共済のノルマ推進で不適切販売が多発している(詳細は特集『JA自爆営業の闇 第2のかんぽ不正』#1参照)。この問題を是正するために事業推進のペースを落とさざるを得ないことを踏まえれば、減益額が試算より膨らむ可能性も否定できない。

Graphic:Daddy’s Home