農林中央金庫の本店が入るDNタワー21=東京都千代田区農林中央金庫の本店が入っていた第一生命日比谷ファースト(旧DNタワー21) Photo:JIJI

農林中央金庫が2025年3月期に7800億円の最終赤字に陥る見通しを示し、農協などに増資に応じるよう要請していることがダイヤモンド編集部の調べで分かった。農林中金は同期以降も159~1894億円の赤字が5年間、続くリスクシナリオを示しており、その間は農協への配当がゼロになる見込みだ。JAグループでは共済(保険)事業の低収益化が経営問題となっており、赤字農協が続出している。農林中金の経営悪化はさらなる追い打ちとなりそうだ。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

内部資料は「1兆円超」の赤字を示唆
7200億円規模の増資要請へ

 三井住友フィナンシャルグループ(FG)と三菱UFJFGが5月15日、増配や1兆円を超える2025年3月期の連結純利益予想を発表したのとは対照的に、JAグループでは、農協の経営に致命的な打撃を与えかねない “不穏”な資料が密かに出回っていた。

 JAグループでは、2008年のリーマンショックで農林中金が約6000億円の赤字に沈んで無配となり、農協などが増資を迫られたトラウマがある。だが、今年5月に出回っていた同内部資料には、リーマンショック時を上回る巨額赤字と増資要請の金額が並んでいたのだ。

 農林中金は出資者である農協などが集めた預金を運用し、その運用益を還元してきた。農協にとっては有難い存在だったわけだが、今後5年間は、“お荷物”の上部団体に成り下がることになりそうだ。

 農林中金が赤字に転落することの農協への影響の大きさは計り知れない。

 農協は、職員が共済の営業ノルマを達成するために本来不要な保険契約を結ぶ“自爆営業”が社会問題となり、営業活動の自粛を余儀なくされている。それによって共済事業が減益となり、ただでさえ農協の経営はひっ迫している。

 ダイヤモンド編集部が4月に、全国に約500ある農協の5年後の損益シミュレーションを実施したところ、207JAが赤字に転落する結果となった(詳細は、特集『儲かる農業2024 JA農水省は緊急事態』の#1『過去最多207農協が赤字転落!JA赤字危険度ランキング2024【全国ワースト489・完全版】3位JA京都、9位北群渋川、1位は?』参照)。

 今回判明した農林中金の配当の停止などによって、さらに多くの農協が赤字に沈む可能性が高まった。

 次ページでは、農林中金が農協などに示した5年間の損益シミュレーションの内容や、配当停止、農協やJA共済連への増資要請額などを明らかにする。