天下りの警察OBに「退職金10億円」払った団体の名前…世間が呆れ返った警察利権の実態とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

警察庁のキャリア官僚たちはノンキャリアの警察官とは昇進スピードも給料も桁違いだ。しかも、優遇されるのは現役時代だけではなく、退職後の天下り先もよりどりみどり。一流企業に天下る彼らの特権の実態とは。※本稿は、『腐敗する「法の番人」:警察、検察、法務省、裁判所の正義を問う』(平凡社新書、平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。

総会屋の代替機能として
警察OBを迎える企業

 日本の警察は二重構造になっている。

 警察庁という国家公務員の総合職の試験に合格した数百人のキャリア官僚と、各都道府県の警察本部に所属する約26万人の警察官が存在する。各都道府県の警察本部長、主要な都道府県警察本部の刑事部長、公安部長などの地位は、警察庁からキャリアが派遣されて、ほぼ独占している。

 しばしば指摘されるように、警察官の採用試験に合格した巡査は幸運であれば、ごく少数のエリートとして警視、警視正になり署長で定年を迎える。一般的には、巡査部長、警部補で定年退職を迎える者が多い。

 都道府県警の警察官として採用された場合であっても、警視正以上の地位に就いた場合は国家公務員となり、給与は国から出される。

 こうしたたたき上げの警察官に対して、キャリア官僚は都道府県警察本部の要職と警察庁とを往復しながら、地位を昇っていく。採用されて2年で警部、警視正を経て、20余年で警視長ののち、警視監で定年を迎える者も多い。キャリアは、警察の関連団体、一流企業や金融機関に天下る。

 銀行、保険、証券会社などの金融業は言うまでもない。電通や博報堂などの広告業、ゼネコンなどの建築業、富士通などの通信機器・情報産業、不動産業、日本郵便、日立をはじめとする日本を代表するメーカーや企業である。

 1981年に商法が改正された。それまで企業は、株主総会を円滑に終了させるために、総会屋に金を払っていたが、そうした行為が禁止され、処罰規定も設けられた。総会屋に代替する機能を果たすものとして、またコンプライアンスを遵守するという趣旨から警察の退職者を一般企業が採用するようになったのだろう。

JAFへ天下った警視庁長官
退職金は巨額の10億円

 従来からの警察の領域である、交通と防犯の分野に天下る者も多い。

 交通関係では、天下りの対象としては財団のウェイトが大きいように見受けられる。

 その財団として、日本自動車連盟(JAF)、全日本交通安全協会、交通事故総合分析センター、日本道路交通情報センター、全日本指定自動車教習所協会連合会、空港保安事業センター、日本二輪車安全普及協会、日本自動車交通安全用品協会、道路交通情報通信システムセンター、新交通管理システム協会、日本交通管理技術協会、全国ハイヤー・タクシー連合会、東京ハイヤー・タクシー協会、などの財団法人や社団法人の理事長や専務理事、常務理事として天下っている。