残業50時間でも給料が増えないなんてあり!?「固定残業代」のカラクリ新しい人が入るまでという条件で、月50時間の残業をすることになった若手社員。「残業代がたくさんもらえる」と喜んで残業していたが、翌月の給料はまったく増えていなかった……(写真はイメージです) Photo:PIXTA

パート社員が退職し、新しい人が入るまでという条件で、月50時間の残業をすることになった若手社員。「残業代がたくさんもらえる」と喜んで残業していたが、翌月受け取った給料明細を見ると、給料はまったく増えていなかった……!なぜこんなことが起こるのか。この場合、会社は残業代を払うべきではないのだろうか?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
 建築資材メーカー。従業員数200名。
<登場人物>
A
:資材管理部勤務の28歳
B:甲社の総務部長(以下「B部長」)
C:甲社の顧問社労士

人手が足りない数カ月間、月50時間の残業をすることに

 入社以来、資材管理の事務を担当しているA。同じ業務を担当している社員5名のうちパート社員2人が今年1月末で退職した。Aは今まで残業はほとんどなく定時に仕事を終えていたが、2人が抜けた穴を埋めるために2月から新しいパート社員が入社するまでの間、勤務時間終了後に月50時間の残業をすることになった。

<Aの労働条件>
勤務時間:9時から18時まで(休憩1時間)
休日:土。日・祝日・その他
給料:月24万円。給料は末日締め翌月25日払い

 しかしAにとって残業することは嫌ではなく、むしろ大歓迎だった。Aの趣味は好きなキャラクターのフィギュアを集めること。一人暮らしの部屋に所狭しと飾られた自慢のコレクションのために、給料から生活費を除いた残りを全部つぎこんでいた。当然新しいフィギュアを手に入れるにはお金がかかるので、給料は多ければ多いほどいいわけだ。

 嬉々として残業に励んでいたAだが、思いもよらぬことが起こった。それは3月25日の給料日のこと、

「2月はたくさん残業したから、給料がどれだけ増えているか楽しみだな」

 ワクワクしながら2月分の給料明細書を見たAは愕然とした。

「そんなバカな!50時間も残業したのに1円も給料が増えていない。これはきっと残業代の加算を忘れているからだ。すぐにB部長に訂正してもらわなきゃ」

 Aは給料明細書を握りしめて、すぐさま総務部に飛んで行った。