では、何がもうひとつの原因なのか。それは、今述べたメーカーの枕詞にある。BOSEならスピーカー、B&Oならデザイン家電のように、各社は自社の製品の特徴と製品ラインアップを絞って、「このブランドと言えばこれ」「これといえばこのブランド」というイメージを作ってきた。アップルですら、スマートフォン、PC、イヤホンから大きくラインアップを広げようとしていない。

 一方のオンキヨーはどうか。デノンのような単品コンポのピュアオーディオだけではなく、ソニー同様のポータブルオーディオを出してみたり、ワイヤレスイヤホンや、パイオニアブランドではあるがシーリングランプまで手がけたりしていた。

 あるとき、オンキヨーがオーディオに特化したスマートフォンを発表したときに、真偽のほどは定かではないが、「評価用サンプル」という名目でお土産に新製品のスマートフォンを配っていたという話をしていた記者もいた。少し横道にそれるが、メーカーにとって新製品は我が子であって、それをただでお土産にするなど言語道断である。筆者もメーカー勤務時代にサンプルの貸し出しは行っていたが、「借りパ……」ではないが、返却の遅い媒体にいかに製品サンプルを返却してもらうかで苦労をしていた。

「良いものをつくれば売れる」
という固定観念の危うさ

 バブル期と言わないまでも1990年代までは、中堅メーカーが良いものをつくれば、ラインアップを広げていったり、製品の数を増やしたりしても、何とかやっていけたかもしれない。それは、かつてNEBA店と呼ばれた地域量販店が、歩合制の店員を店内に配置し、一生懸命商品説明をして、少しでも高いものを売ろうとしていた時代であったからである。

 2000年代に入ると、YKK(ヤマダ、コジマ、ケーズ)という全国チェーンが台頭し、ほとんど売り場に説明員がいない状況が生まれ、良いものを作っても顧客に良さが伝わりにくくなった。さらにEコマースの広がりや、Amazonによる家電取り扱いの開始によって、さらに細かな説明をしないと良さが伝わらない商品は売れない状況に陥った。むしろ最近のヤマダ電機の方が、丁寧に商品説明をしてくれている。