今は何と言っても「現金は王様」の時代だ。ここにきて市場のお気に入りだった自社株買いに積極的な企業よりも、高い配当を提供する企業が選好されており、「キャッシュ第一」の投資家心理を色濃く反映している。安定した配当支払いを確約する企業にマネーが殺到する背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げと株式市場の低迷を受けて、手元に現金を確保しておきたいとの欲求が高まっていることがある。ここ10年で最大とも言える不安定な値動きが続く中、投資家は通信大手AT&Tやたばこ大手アルトリアといった銘柄に資金を逃避させている。金利上昇、インフレ高進、成長減速への警戒から、株式市場は大荒れの展開が続いており、過去10年に市場を席巻してきた割高なグロース株――これまで配当ゼロか、ほとんど支払ってこなかった――には見切り売りが膨らんでいる。