中国の若者が「国外脱出」渇望、不満爆発の理由はゼロコロナ失策の他にもPhoto:d3sign/gettyimages

中国の若者は本気で中国からの脱出を考えている。習近平指導部は、コロナ禍初期に武漢のロックダウンを通して求心力を高めたが、今の上海のロックダウンはこれとは真逆の「信用崩壊」をもたらした。中国では封鎖状態に置かれた人口は3億人を超えるとの試算もあるが、これだけの人口が「自宅幽閉」や野戦病院への「強制連行」など、理にかなわない生活を経験させられたことの影響は大きい。中国の若者が新たな居場所を求め始めている。(ジャーナリスト 姫田小夏)

武漢ロックダウンの後は中国人が祖国回帰した

 今年3月末から続いている上海のロックダウンは、住民の“生存の限界”に迫るものだ。

 住民を家に閉じ込めるという点では2020年の武漢ロックダウンも同じだったが、上海の「完全幽閉」に比べたら“半自由”の状態に近く、規制の範囲内で出入りができていた。また、食料調達に関しても、武漢の場合、春節前の買いだめも重なった上、比較的正常に行われたデリバリーにより、上海ほどパニックにはならなかった。

 つまり、武漢の封鎖は、当局の要求がある程度「理にかなったもの」だったから住民は受け入れていたといえるだろう。その住民たちに対し「武漢加油(武漢頑張れ)」の声と支援物資が全国から届き、住民たちも団結して克服しようという気概に満ちていた。

 この結果、76日で解除された武漢ロックダウンに対し、国内在住者のみならず在外華僑は達成感を抱いた。中国に対する愛国心は一気に高まり、「世界一安全な国は中国だ」と在外の中国人が大陸に戻ってきた。

 この“成功モデル”が「ゼロコロナ政策」につながっていった。だが、その中国で「逆行現象」が始まっている。