データセンターと岸田文雄首相岸田政権の目玉政策「デジタル田園都市国家構想」のデータセンター地方分散化は、国内企業が成否の鍵を握る Photo:imaginima/gettyimages、Pool/gettyimages

岸田政権は、データセンターの地方分散化を目玉政策の一つとして打ち出した。開発を行う事業者にとっては投資の追い風になるだろう政策だ。にもかかわらず、彼らはあまり乗り気ではない。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)

デジタル田園都市国家構想の一環
経産省が候補地78カ所のリストを公表

 岸田文雄首相は昨年、地方からデジタルの実装を進め、地方と都市の差を縮めるデジタル田園都市国家構想を打ち出した。

 併せて、光ファイバー、5G(第5世代移動通信システム)、データセンター(DC)、海底ケーブルなどデジタル基盤の整備計画が明らかにされた。

 2025年度に海底ケーブルを日本海と太平洋を一周するようにつなぎ、DCを全国に展開する。これにより、27年度末の光ファイバーの世帯カバー率を99.9%、30年度末の5G人口カバー率を99%にするといった目標を今年3月に示した。

 それに伴い、4月、経済産業省はDCの誘致を希望している自治体の候補地78カ所のリストを公表した。北海道、秋田県、岩手県、滋賀県などが多く、各地の電力や通信、交通インフラの整備状況の詳細が記されている。

 DC開発は、現在最も盛んな物流施設に次いで、デベロッパー各社が積極的に取り組んでいる不動産投資だ。外資系物流デベロッパーでは、日本GLPが今年2月、28年までに首都圏および近畿圏でDC開発に1兆円以上の投資を予定していると発表した。ESRも投資を拡大する。

 国内系でも3月、大和ハウス工業が千葉県印西市で1000億円を投じて開発中の案件に加え、25年までに1000億円規模を追加投資して国内数カ所でDCを開発する計画を明らかにしている。

 デジタル田園都市国家構想は、こうしたDC投資の追い風になりそうだが、当の事業者は「経産省が示したリストの場所に投資するビジョンはまだ見えない」と二の足を踏む。それはなぜか。