岸田文雄首相が英ロンドンの金融街シティーで行った投資家向けの講演が話題だ。「インベスト・イン・キシダ(岸田に投資を)」と、日本への投資を呼びかけた。資産所得を倍増するという目標設定は悪くないが、ピント外れな話題もあった。逆に、全く言及がなかったことが注目に値することもあった。今回は「岸田スピーチ」の中身を掘り下げる。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
「インベスト・イン・キシダ」
ロンドンで岸田首相が投資家向けに講演
5月5日、岸田文雄首相は外遊先の英ロンドンの金融街シティーで、投資家向けに講演を行った。講演全体の主旨は、「投資家の皆さん、日本に投資してください」で間違いないだろう。「インベスト・イン・キシダ」と言ったが、これは、かつての安倍晋三元首相の「バイ・マイ・アベノミクス」を連想させる。
演説の話題は、ウクライナ問題に始まり、ロンドンに集まった投資家へのメッセージ、「新しい資本主義」、グリーン・デジタルへの投資を含む日本の経済政策への意気込み、などへと流れた。
まず、海外の投資家に日本経済への投資を売り込む趣旨のコミュニケーションを行ったことは前向きに評価できる。日本の株価形成の主役が海外投資家になって久しい。海外投資家からの日本株への投資自体が重要であるし、それが日本国内の投資家の投資意欲につながる点でも意味がある。