現状は60歳以上の誰もが
iDeCoに入れるわけではない

 ところが2017年以降、iDeCoの加入対象が大きく広がったことで、利用できる対象が増えた。かつ、今年の10月からは加入条件も緩和されることから、自営業だけでなく、サラリーマンも積極的に活用できるようになる。むしろ、この5月から実施された65歳までの加入延長を可能とする制度は、明らかにサラリーマンにとって大幅に有利になるのだ。

 iDeCoの加入要件は「国民年金に加入していること」である。サラリーマンの場合、60歳以降も雇用延長で働くにあたっては、厚生年金に加入するケースが多いだろう。

 厚生年金に加入するということは自動的に国民年金にも加入することになる。したがって60歳以降も働くという道を選んだサラリーマンであれば、その多くは65歳までiDeCoを利用することが可能だ。

 ところが、自営業やフリーランス等の場合、国民年金に加入できるのは一部の任意加入(未納期間を無くすための加入)を除けば原則は60歳までである。つまり、iDeCoはサラリーマンであれば60歳以降もその多くが加入できるのに、自営業やフリーランスの場合は原則として加入できないということになる。つまり、誰でも利用できるわけではないのだ。

 本来、iDeCoは国民年金を補完するために自営業やフリーランスの人たちに積極的に利用してもらいたいというのが趣旨であるにもかかわらず、これでは本末転倒と言わざるを得ない。

 仮にサラリーマンで毎月2万円の積み立てができるという場合、5年間での積立総額は120万円、仮に年3%で運用できた場合は約130万円となる。また、iDeCoでは積立金の全額が所得控除されるため、仮に年収が400万円の場合、5年間では約18万円の節税効果がある。

 加入期間が5年延長されることで150万円近いメリットが得られるのだから、これは決して少ない金額ではない。

 にもかかわらず、その恩恵を本来は受けられるはずの自営業やフリーランスが利用できないままに65歳までの加入拡大が決まり、さらに今、65歳以降の加入拡大についても検討されようとしている。