国民年金の加入期間延長も
視野に入れるべきだ

 これに対して、筆者は単に「貯蓄から投資へ」という流れの中だけで考えるのではなく、老後生活の安心感を増すための方法として、国民年金の加入期間延長も検討すべきだと考える。

 つまり、現在60歳までと決められている国民年金加入期間を65歳まで、5年間延長するということだ。

 これは、自営業やフリーランスの人にとってのメリットは非常に大きい。また、サラリーマンでも現在60歳を過ぎて会社の雇用延長などで働く人は8割以上いるわけなので、かなり現実的な対策だと思う。

 これによって本来、加入の優先度の高い自営業・フリーランスの誰もがiDeCoに65歳まで加入できるようになる。

 もちろん、国民年金の加入期間延長というのは公的年金制度の根幹に大きく関わる問題なので、iDeCoが利用しやすくなるという程度のことだけで考えるわけにはいかないだろう。しかしながら、長寿化が進む現在においては、働く期間が長くなるのは必然であろうし、それに合わせて制度の加入期間を見直すというのは非常に合理的な判断だと考える。

 実は国民年金の加入期間の拡大というのは、平成26年の公的年金財政検証のオプションプランで試算されたことがある。その時の結果によれば、65歳まで加入し、70歳から受給を始めた場合の所得代替率(現役時代の手取り収入の何割をカバーできるかという割合)は78.5%となる。

 引退後に現役時代の8割近い所得が確保できるのであれば、その安心感は大きいだろう。そもそも国民年金がスタートした昭和35年当時の平均寿命は、男性だと65.32歳である。

 現在の男性の平均寿命は81.64歳だから、16年も寿命は延びている。であるなら、加入期間を5年延ばし、受け取り期間を70歳からとするのは別に不自然でもなんでもない。iDeCoの加入年齢を拡大しようということであれば、このあたりの制度の整合性も重要である。

 繰り返しになるが、筆者は制度拡大には賛成である。iDeCoを国民年金の補完として考えるのではなく、もっと積極的に老後に向けた個人の資産形成策として支援とするのもよいだろう。

 ただ、単純に投資振興策としてだけ考えたのでは制度全体がいびつなものになり、新たな不公平が生じかねない。そのあたりをしっかりと考えた上で制度改革の議論をしてもらいたいものである。