iDeCo加入を65歳以上に拡大検討、このままでは「本末転倒」になる理由Photo by Kim Kyung-Hoon - Pool/Getty Images

5月31日、岸田政権は経済政策「新しい資本主義」の実行計画案を公表した。その内容からは、投資や成長を重視する姿勢がうかがえる。だが、放置しておくと混乱を招きそうで気になることもある。具体的に解説しよう。(経済コラムニスト 大江英樹)

 岸田政権は31日、経済政策「新しい資本主義」の実行計画案を公表した。

 その中のひとつに、iDeCo(イデコ)加入を65歳以上に拡大することを検討するという項目が含まれている。iDeCoというのは個人型確定拠出年金のことで、制度が始まったのは2001年と20年以上も前だが、2017年以降に加入者が拡大し、3月末では238万人にも増大している。

 元々iDeCoの加入年齢は60歳までであったが、制度改正によって先月(5月)から65歳までの加入が可能となった。

 その途端に今度は65歳以上に加入拡大というのは、いささか唐突な気もするが、加入年齢の拡大自体は決して悪いことではない。平均寿命が延び、65歳以降でも働く人が約5割いるという現代で、自分の老後に備えて積み立てができる期間が延びるというのはよいことだからだ。

 ただ、現時点では具体的にどのように展開されるのかは分からない。報道によれば「今夏にも政府内に検討会議を立ち上げ、少額投資非課税制度(NISA)の抜本拡充とともに議論する」とされている。

 ここから読み取れることは、現政権が主導して実施しようとしている「資産所得倍増計画プラン」の具体策として検討しようとしているということだろう。これによって従来よりも一層、「貯蓄から投資」への流れを進めることが可能になるからだ。

 筆者は、制度拡大自体はおおいに賛成の立場だ。しかし今後、実際に制度を作っていく中ではいくつか整理しておくべきことがあり、それをきちんとしておかないと混乱する可能性もあると考える。

 そこでいくつかのポイントについて考えてみたいと思う。