アナウンサーになろうとは1ミリも思っていなかったというTBSの井上貴博アナウンサーが、初の著書『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)を刊行!「地味で華がない」ことを自認する井上アナが実践してきた52のことを初公開している。300ページ以上にわたる本書は、テレビの最前線で培ってきた「伝わらない」が「伝わる」に変わる方法が満載だ。人前で話すコツ、会話が盛り上がるテクなど、仕事のプレゼンやプライベートの雑談でも役立つノウハウと、現役アナウンサーならではの葛藤や失敗も赤裸々に綴る。
※本稿は、『伝わるチカラ』より一部を抜粋・編集したものです。

【現役ニュースキャスターが教える】<br />なんとなくわかったような気にさせる<br />テレビで使ったシンプルなテクニック

比べることでイメージをふくらませる

「情報を比較する」というのも、端的に伝えるうえでは重要な技法です。「比較する」とは、何かを別のものに置き換えて、イメージを膨らませる手法です。比較の代表例として市民権を得ているのが「東京ドーム○個分の広さです」という表現でしょう。実際には「東京ドーム10個分」と言われてもよくわからないのですが、そう言うと、なぜかみんな納得してくれます。

私自身は、ありきたりな東京ドームは避け、「サッカーコート○面分」「テニスコート○面分」「東京ディズニーランド○個分」といった言い回しを使うことが多いです。比較の対象はたくさんあるので、何を選ぶのかというところにセンスが問われます。

なんとなくわかったような気にさせる

以前、『Nスタ』で「日暮里・舎人ライナー」(東京東部を通る新交通システム)が脱輪したというニュースを報じたことがあります。事前にスタッフから「オンエア中に車両の吊り上げ作業の模様を中継できそう」と聞き、日暮里・舎人ライナーについて調べてみることにしました。日暮里・舎人ライナーの重さは、1両あたり約2トン。車体の長さは約8・5メートルあります。ただ、これをそのまま伝えても面白みがありません

そこでオンエア時は、中継の映像に合わせてこのように伝えてみました。

「この車両は1両約2トン、車体の長さは8.5メートルなんです。8.5メートルというと、『かに道楽』の看板についている、かにの横幅(約8メートル)と同じくらい。これは、シンガポールのマーライオンの高さと同じくらいです。だから、横倒しになったマーライオンを引き上げているようなものです」

私自身、マーライオンを直接見たことはありません。それでも「マーライオンと同じくらいの大きさ」と言われると、不思議なもので、なんとなくわかったような気になります

※本稿は、『伝わるチカラ』より一部を抜粋・編集したものです。