初の著書『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)を上梓したTBSの井上貴博アナウンサー。実はアナウンサーになろうとは1ミリも思っていなかったというのだが、一体どのようにして報道の第一線で勝負する「伝わるチカラ」を培ってきたのだろうか?「地味で華がない」ことを自認する井上アナが実践してきた52のことを初公開! 人前で話すコツ、会話が盛り上がるテクなど、仕事でもプライベートでも役立つノウハウと、現役アナウンサーならではの葛藤や失敗も赤裸々に綴る。
※本稿は、『伝わるチカラ』より一部を抜粋・編集したものです。

【TBSアナウンサーが教える】話すときのスピードは自分が思っている何倍まで遅くてもいいのか?

おばあちゃんに話すようにゆっくり話す

間のとり方は、自分のおじいちゃんやおばあちゃんに話すときのペースを目安にしています。おじいちゃんやおばあちゃんに対しては、誰もが聞きやすいように、ゆっくり間をとりながら話しているはず。その話し方をイメージすると、適度な間をとることができるようになります。

また、話すときの間は、自分が思っている5倍くらいとっても大丈夫です。「5倍」というと誇張がすぎますが、感覚的にはそのくらい大胆に間をとってもいいということです。

ちなみに、テレビでは朝、昼、夕方、夜の番組ごとに視聴者層がそれぞれ異なるので、心地よい間のとり方にも違いがあります。朝は若い視聴者が多く、大半の人が忙しくしているので、早いテンポで話すように心掛けていました。一方、昼、夕方は視聴者の年齢層も上がるので、もうすこしゆったりしたテンポが適していると感じます。

自分が思う以上に話すペースはゆっくりでいい

間をとると、聞き手の注目を集め、言いたいことを強調する効果も得られます。間のとり方の達人といって真っ先に思い出すのは、私が『朝ズバッ!』でお世話になった、みのもんたさんです。みのさんは、VTRが終わってから、ひと言目を発するまでに、放送事故になるかと思うくらい間をとることがありました。

周りにいる私たちが「えっ、大丈夫?」と思うギリギリまで、沈黙したまま平然な顔をしているのです。大きな間があると、何かもっともらしいことを言うよりも、聞き手に伝わるものがあります。なぜなら、聞き手が自分で余白を埋めることで、思い思いのメッセージを受けとってくれる効果があるからです。

※本稿は、『伝わるチカラ』より一部を抜粋・編集したものです。

井上貴博(いのうえ・たかひろ)
TBSアナウンサー
1984年東京生まれ。慶應義塾幼稚舎、慶應義塾高校を経て、慶應義塾大学経済学部に進学。2007年TBSテレビに入社。以来、情報・報道番組を中心に担当。2010年1月より『みのもんたの朝ズバッ!』でニュース・取材キャスターを務め、みのもんた不在時には総合司会を代行。2013年11月、『朝ズバッ!』リニューアルおよび、初代総合司会を務めたみのもんたが降板したことにともない、2代目総合司会に就任。2017年4月から、『Nスタ』平日版のメインキャスターを担当、2022年4月には第30回橋田賞受賞。同年同月から自身初の冠ラジオ番組『井上貴博 土曜日の「あ」』がスタート。同年5月、初の著書
『伝わるチカラ』刊行。