アナウンサーになろうとは1ミリも思っていなかったというTBSの井上貴博アナウンサーが、初の著書『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)を刊行!「地味で華がない」ことを自認する井上アナが実践してきた52のことを初公開している。300ページ以上にわたる本書は、テレビの最前線で培ってきた「伝わらない」が「伝わる」に変わる方法が満載だ。人前で話すコツ、会話が盛り上がるテクなど、仕事のプレゼンやプライベートの雑談でも役立つノウハウと、現役アナウンサーならではの葛藤や失敗も赤裸々に綴る。
※本稿は、『伝わるチカラ』より一部を抜粋・編集したものです。

【現役ニュースキャスターが教える】あれこれ伝えようとして結局伝わらない人が実践すべき1つの方法

あれこれ伝えようとしても逆効果

間を置くことと関連して、「話す情報を絞る」というのも大切なポイントです。セールスの世界では、立て板に水の話をするセールスパーソンがいい結果を残すとは限りません。人は、多少話し下手でも、聞きたいことを丁寧に教えてくれるセールスパーソンから物を買いたいと思うものです。

私自身、洋服屋さんなどで、押しが強くあれこれセールストークをしてくる店員さんがちょっと苦手です。

「今年の流行りはこれなんですよ」「私もこれを買って着ているんですけど、とてもいいですよ」「芸能人の○○さんが着ているのと同じブランドなんです」

そんなふうに情報をたくさん出されれば出されるほど、気持ちが引いてしまいます。どれも私が必要としない情報だからです。

必要としない情報を押しつけられるのは、不愉快に感じることもあります。「そんなこと別に知りたくないし……」という気分になります。自分が普段買い物をするときには、情報を押しつけられるのを嫌がるのに、なぜか売り手側になると、ついつい情報を押しつけたくなります。

伝えたい情報は1つに絞る

売り手側は、情報を与えることで、お客さんの心を後押ししたいと考えます。買ってもらえるか不安なので、ついつい情報を詰め込みたくなります。テレビも、これまでずっと過剰な情報を押しつけてきたように感じます。情報を畳みかけることで、視聴者の興味をつなぎとめようと腐心してきた面があるからです。

しかし、テレビが情報を押しつければ押しつけるほど、視聴者の心は離れていってしまいます。情報を詰め込もうとしても逆効果。あれこれ詰め込もうとせず1つの情報をゆっくり丁寧に伝えるべきです。5分間で何かを伝える場合、伝わる情報はせいぜい1つです。会議やプレゼンなどで伝えたいことがたくさんあるとき、一気に伝えようとするのではなく、情報を1つに絞ってみましょう。

言いたいことを書き出して優先順位をつける

情報を絞るときのコツは、一度書き出してみることです。プレゼンをするなら、事前に内容をひと通り書き出してみます。一言一句正確に書き出す必要はありません。言いたいことを箇条書きで並べていく程度で十分です。ひと通り書き出したあとに優先順位をつけ、情報を1つに絞ります。そして、プレゼン本番では、絞った情報を的確に伝えるのです。

ゆっくりでもいいので、一番伝えたいことに絞って伝える。そうすれば、伝えたい情報を確実に届けることができます。

ゆっくりでもいいので、一番伝えたいことを絞って伝える
伝えたいことを箇条書きで書き出してみる 書き出したことに優先順位をつけてみる 情報を1つに絞って、その情報を的確に伝える

※本稿は、『伝わるチカラ』より一部を抜粋・編集したものです。