米インフレ高騰、FRBと政府はどう見誤ったのかPhoto:The Washington Post/gettyimages

 バイデン米政権関係者や連邦準備制度理事会(FRB)高官は、インフレへの対応を誤ったと公の場で認めている。

 この失敗の背後には、経済を誤って解釈したことがある。

 ジョー・バイデン大統領の顧問やFRB当局者は、新型コロナウイルス禍とこれに伴う制限措置が2007~09年の世界的な金融危機のように、弱い需要と成長低迷、長期にわたる失業率の高止まりや過度に低いインフレをもたらすと危惧していた。

 そのため、新たな危機にも前回の戦略を適用。FRBは事実上のゼロ金利を復活させ、時期尚早な緩和解除は行わないと確約した。政権関係者は前回の危機時にはFRBに頼りすぎたとの反省から、今回は積極的な財政出動に踏み切ることを決定。ドナルド・トランプ前大統領に始まり、バイデン氏による1兆9000億ドル(約255兆円)相当のコロナ経済対策に至った。

 さらに、政権と上下両院の実権を奪還した民主党内では、米政界の優先課題を共和党が推進する減税から、新たな社会保障制度の拡充へとシフトするまたとない機会との声が高まっていた。

 だが、コロナ禍の経済は根本的に異なることが後になって判明する。前回の金融危機では、主に企業や消費者の需要が大きく落ち込んだが、コロナ禍では供給が寸断され、結果的に原料やコンテナ船、労働者、半導体などの不足が長引いた。