コロナ禍の2020年、ハーバードビジネススクールに入学したフランシスコ・バロッソさん(33歳)は、パンデミック下で学ぶことになった経験について「メリットも大きかった」と振り返る。世界的なパンデミック、ロシアによる軍事侵攻など国際情勢が大きく変化する中、世界のエリートたちが集まるハーバードで学んだ意義とは。授業で印象に残った日本企業事例についても併せて語ってもらった。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
世界的なパンデミック下
ハーバードで学んだ意義
佐藤智恵 バロッソさんは2020年、コロナ禍で一部の合格者が入学を延期する中、あえてハーバードビジネススクールへの入学を決めました。有事の際にビジネススクールで経営を学ぶとは、実際のところどのような体験だったのでしょうか。
フランシスコ・バロッソ 私が入学を決めたのは2020年4月。ちょうど新型コロナウイルスの感染が急速に拡大していた時期でした。先行き不透明な状況ではありましたが、こんな激動の年に経営大学院でリーダーシップを学べるなんて、またとないチャンスだと思い、予定通り入学することにしました。
結果的に2年間、まるまるパンデミック下で学ぶことになりましたが、振り返ってみればメリットも大きかったと感じています。
この2年間でEコマース、ウェブ会議システム、サーキュラーエコノミー(循環型経済)などの分野で新規ビジネスがどんどん立ち上がり、急成長していきました。ビジネス環境がとてつもない速さで劇的に変化していく中で経営やリーダーシップを学べたことは、何よりも貴重な体験となりました。
また、平時のときよりもはるかに多くのゲストスピーカーが授業に参加してくれました。Zoomを活用して、毎回のようにトップリーダーの話をライブで聞けたのは、この時期ならではの体験でした。
パンデミック下で、クラスメートとの絆もむしろ強まったと感じています。対面で会うことが制限されていた分、かえって仲間同士の団結力が生まれました。
もちろんデメリットもありました。一番の心残りは、日本への研修旅行に行けなかったことです。外国への研修旅行がキャンセルになってしまったのは本当に残念でしたが、その代わりに地元ボストンで苦境に陥った店や企業を立て直すプロジェクトなどに参加する学生もたくさんいました。こうしたプロジェクトも平時では体験できなかったと思います。
佐藤 今年2月には、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始しました。この歴史的な出来事はハーバードビジネススクールの授業にどのような影響を与えていますか。