フェイクニュース製造村の戦慄…月収5万円の村民が偽記事でベンツを買うまでPhoto:PIXTA

ロシアによるウクライナ侵攻で勃発した戦争では、当初から情報線が繰り広げられている。その中には、「フェイクニュース」と指摘されるデマとおぼしき情報も入り交じる。そしてフェイクニュースがまん延するようになった現代社会の裏には、「フェイクニュース製造工場」とでもいうべき存在があった。しかもその場所は、月収5万円ほどの村民たちが暮らす小さな村だったのだ。(イトモス研究所所長 小倉健一)

ロシアによるウクライナ侵攻の口実すら
「フェイクニュース」の可能性

 ロシアのウクライナ侵攻において、ロシアとウクライナが共に双方の発表を「フェイクニュース」だと指摘するなど情報戦が続いている。

 フェイクニュースとは、デマや一方的過ぎる情報を指す。メディアを通じて広がり、陰謀論や政治的なプロパガンダなどと結び付いて人々の生活や国の安全保障をも脅かす存在になっている。「ニュース」というだけに報道のような形で広がっていく。

 その最たる例が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻を正当化するための主張だろう。ウクライナ東部でウクライナ政府軍によるロシア系住民の「ジェノサイド(集団殺害)」が起きていると主張したが、根拠に乏しいと指摘されている。

 さらに別の疑惑もある。ロシアの国営メディアであるタス通信は、ロシアがウクライナへ侵攻する前の2月21日、ロシア領内に侵入したウクライナ軍車両をロシア軍が破壊したと伝えた。しかし、SNSで拡散した映像を英調査報道機関ベリングキャットが分析した結果、フェイクニュースの可能性があるという。べリングキャットは動画に映っている車両を「BTR70M」装甲兵員輸送車と判断したという。しかしウクライナ軍はBTR70Mを運用していないのだ。

「ジェノサイド」や「ウクライナ軍によるロシア領内への侵入・攻撃」というフェイクニュースが、今回の侵攻の口実に使われていた可能性が高いのだ。

 対するウクライナからもフェイクと思しきニュースが流れており、両国によるフェイクニュースの情報戦が盛んだ。

 フェイクニュース自体は、昔から「デマ」「虚言」などと表現は違っていたかもしれないが存在はしていただろう。ただ、私たちも世間話の中で、相手の話が信頼性が足らない気がしたときには「それ、フェイクニュースではないの?」と問う場面が増えてきたように感じる。

 その裏には、「フェイクニュース製造工場」とでもいうべき存在があった。しかもその場所は、月収5万円ほどの村民たちが暮らす小さな村だったのだ。