世界貿易機関(WTO)は自由貿易のルールを保護し、繁栄を広めるために設立されたが、現在では米国のイノベーションを乗っ取る手段になりつつある。中国を含む開発途上国が新型コロナワクチンに関する知的財産(IP)を奪うことを認めるWTO加盟164カ国・地域による17日の合意に注目してほしい。ホワイトハウスは今回の合意を外交的な勝利だと大々的に宣伝している。しかし、これは米国の国益にとって大きな敗北であり、中国に利益をもたらすとともに、IPの権利保護を損なう前例となるはずだ。世界の詐欺師たちが米国の技術を盗もうとするのは今回が最後とはならないだろう。WTOでの対立は2020年秋、インドと南アフリカが新型コロナのワクチン、治療法、検査技術に関するIPの権利保護を停止する決議案を提出したことから始まった。両国はすぐに「公平性」の欠如を訴える低所得国や進歩派の支持を集めた。米国と欧州がこれらの技術開発に資金を提供したことは意に介さないという姿勢だ。