プロフェッショナルとしての
信念を持つための3つの心がけとは

 国家の基本は人材である。政府も企業も優れた人材を育てることに、もっと真剣でなければならない。

 私は外務省を退官して8年近くになるが、この間、大学院でゼミを持ち、異なる職業の社会人に向けたいくつかの塾を主宰し、外務省や公務員研修所などでの講義をして若い人々に接し、私なりに人材の育成に携わってきた。

 

 自分自身の経験を通じて蓄積してきた外交や戦略の考え方以上に大事だと思い、意識して議論するのは、プロフェッショナルとしての生き方についてである。

 今日、政治家や官僚、ジャーナリストや企業人を含め、プロフェッショナルとしての信念に欠けた人々が多くないか。職業上の使命感よりも自己保身や人間関係の前さばきだけを旨として生きている人があまりに多くないか。日本の失われた20年は、プロフェッショナリズムが失われた20年と言えるのではないか。

 私がプロフェッショナルの心がけとして強調するのは、「物事の本質を見よう」「変えることに躊躇をするな」そして「競争を避けてはならない」という3つの点である。

 物事の本質を見分けるためには、十分な情報を得るとともに情報を評価できる知見を持たねばならない。表面的な文字面や過去の先例や決まり事だけを重視し、本質を避けて通ってしまうほうが楽である。

 そして、特に政治家や官僚は既得権益に縛られ、変化を嫌う。さらに「みんなで渡れば怖くない」とばかり、何よりも横並びと和を重視し、競争し個が抜きんでることを嫌うのは、日本の伝統なのであろうか。本質を見ることをせず、変えることに臆病になり、競争を避けるがゆえに日本の社会は停滞していっているのではないか。

 本質を見、変化を実現し、競争を厭わない人材が社会の発展の原動力であることを強く意識したのは、計12年間にわたる英国と米国での留学や研修、勤務経験の故であると思う。

 英国も米国も、プロフェッショナルを重視し変化を厭わないダイナミックな社会であり、それをもって一時の衰退から抜け出した国々である。特に英国から学ぶことは多い。