ロシアは現在、二つの戦争を遂行している。ウクライナとの熱い戦争と西側諸国との冷たい戦争だ。前者のコストが死者数と破壊の度合いで測られる一方、後者のコストは経済的困難とインフレで測られる。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、この冷戦では自身に時間的余裕がないことを知っている。中国が味方に付いているものの、米国と同盟国は富・知識・技術・財政面で圧倒的に優位だ。プーチン氏にとって勝利への唯一の道は、西側の消費者に短期的に高いコストを負わせ、ウクライナへの政治的支援を崩壊させることである。最近の情勢はプーチン氏に希望を与えるかもしれない。西側による初期の制裁がもたらした衝撃と畏怖(いふ)は徐々に消え、ロシア経済は大きな打撃を受けたものの崩壊してはいない。一方、西側の買い手による自己制裁とプーチン氏によるガス供給の意図的な削減により、西側ではエネルギーコストが急上昇し、指導者の政治的立場がむしばまれている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が率いる与党連合は国民議会(下院)選挙で過半数割れとなり、プーチン氏に友好的な極右・国民連合が議席を大幅に増やした。英国ではボリス・ジョンソン首相の与党・保守党が下院2選挙区での補欠選挙で敗北したばかりだ。
米ガソリン高騰、新冷戦への意欲を試す
バイデン氏は独「緑の党」のエネルギー政策転換から学べ
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